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事業ステージ別データドリブン経営

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ここでは、データドリブン経営サイクルのPDCAのCheck(検証)とAct(改善)を事業のステージ別に分けて説明します。
下図は、データドリブン経営のマネジメントサイクル(PDCAサイクル)です。



Check(検証)の「問題の特定」タスクは、財務KPIの目標値と実績値のGAPである問題がどこで発生しているのかを特定する段階で、「原因の推定」タスクは、その原因を特定する段階です。
ここで、戦略マップの因果関係を考えると問題の原因を次のように分類することができます。

  1. 価値仮説の相違(顧客の視点)
    顧客価値や製品価値の仮説と「顧客が実際に価値と感じたもの」のズレ。
  2. プロセスの制約(内部プロセスの視点)
    制約理論(TOC)のスループットを止めている構造的制約。
  3. 資産の能力(学習と成長の視点)
    職務の不適合、人の意欲や能力不足、情報資産の品質や能力の不足。


さて、データドリブン経営サイクルのAct(改善)では、この3つの原因に対する課題の解決方法を順番に検証するのですが、その優先順位が事業のステージによって異なります。
事業のステージをBCG(ボストンコンサルティンググループ)の事業ポートフォリオ(プロダクトポートフォリオ)で分けると事業のステージは次のように分類することができます。

  • 新規事業
    新規事業の成長ステージは次のようになります。
  • 既存事業
    • 問題児
    • 花形
    • 金のなる木
    • 負け犬

BCGのプロダクトポートフォリオ

これにバリューチェーンで説明した以下の6つのバリューチェーンを組み合わせてAct(改善)の優先順位を考えます。

  • Creationサイクル
    潜在的シーズ×潜在的ニーズに関する活動
    これは、製品の開発(新規価値仮説の設定)×顧客の獲得(新規顧客仮説の設定)に関する事業創出活動になります。
    BCGのプロダクトポートフォリオでいうと新規事業の状態から問題児の状態であると考えることができます。
  • Innovationサイクル
    潜在的シーズ×顕在的ニーズに関する活動
    これは、製品の開発(新規価値仮説の設定)×顧客の活性化(既存顧客仮説の改良)に関する事業変革活動になります。
    BCGのプロダクトポートフォリオでいうと問題児の状態であると考えることができます。
  • Communicationサイクル
    顕在的シーズ×潜在的ニーズに関する活動
    これは、製品の改良(既存価値仮説の改良)×顧客の獲得(新規顧客仮説の設定)に関する事業変革活動になります。
    BCGのプロダクトポートフォリオでいうと問題児の状態であると考えることができます。
  • Operationサイクル
    顕在的シーズ×顕在的ニーズに関する活動
    さらに、これを次のように分類することができます。
    Operationサイクル(製品の改良×顧客の活性化)
    製品の改良(既存価値仮説の改良)×顧客の活性化(既存顧客仮説の改良)です。
    BCGのプロダクトポートフォリオでいうと花形の状態であると考えることができます。
    業務改革になります。
    Operationサイクル(製品の改修×顧客の維持)
    BCGのプロダクトポートフォリオでいうと金のなる木の状態であると考えることができます。
    業務改善になります。
    Operationサイクル(製品の処分×顧客の処分)
    BCGのプロダクトポートフォリオでいうと負け犬の状態であると考えることができます。

すると次のような優先順を考えることができます。

サイクル Actの優先順 主目的 考え方・理由
Creationサイクル ③ 価値仮説の相違 価値仮説(顧客価値 × 製品価値)の確立 事業が未成熟なため、まず価値仮説そのものを確立する必要がある。
プロセスや資産能力はまだ仮説検証の対象にならない。
Innovationサイクル ① 価値仮説 → ② プロセスの制約 → ③ 資産の能力 既存の顧客価値に対する製品価値の確立 まず価値仮説を明確にし、その価値を創る活動(Innovation)の制約を制御する。
その上で、制約制御を可能にする資産能力向上について仮説検証を行う。
Communicationサイクル ① 価値仮説 → ② プロセスの制約 → ③ 資産の能力 既存の製品価値に対する新規顧客価値の確立 まず価値仮説(誰に・どう伝えるか)を確立し、価値を伝える活動(Communication)の制約を制御する。
最後に、それを支える資産能力について仮説検証を行う。
Operationサイクル
(製品の改良 × 顧客の活性化)
② プロセスの制約 → ① 価値仮説 → ③ 資産の能力 既存の製品価値と既存の顧客価値の深化 比較的低コストで試せるプロセス制約の制御から着手する。
次に市場における価値仮説の調整を行い、最後に最もコストのかかる資産能力の検証を行う。
Operationサイクル
(製品の改修 × 顧客の維持)
② プロセスの制約 → ③ 資産の能力 効率化と安定的な顧客維持 価値仮説は確立されていることを前提とし、コストがかからない順に改善を試す。
制約理論(TOC)によるプロセスの制約は反復的に制御する。
それから、資産の能力を上げても解決できない場合、負け犬の段階であると考える。

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