ここでは、五戒を守るとはどういうことか、以下の観点で解説します。
- 戒律とは何か
- なぜ五戒を守るのか
参考本
成功する生き方 「シガーラ教誡経」の実践 (角川文庫)
戒律とは何か
仏教でいう道徳、つまり、生活を営む上で、ひとりひとりが守るべき行為の規準、が戒律です。
戒律は、お釈迦様も使われていたと言われているパーリー語で、Vinaya, Sīla(ヴィナヤ、シーラ)というそうです。
Vinayaとは「反対方向へ導く」という意味で、Sīlaは vinayaを実践するための項目ということです。
仏教の戒律は、世間の一般的な生き方を違う方向へ導くものです。
世間一般では、経済や政治の世界で、競争に勝つことを重んじています。
競争は、欲や怒りがベースになります。
Vinayaは、その正反対の道、欲や怒りから離れるための道なのです。
「戒律など窮屈で不自由だ」と言う人がいます。
しかし、仏教では、戒律を守って道徳的な生き方こそが人を自由にする、と考えるのです。
この場合の自由とは、何があっても困らないで落ち着いていられることです。
道徳を守っていると、何にも足を引っ張られません。
人が欲や怒りのまま生きたらどうなるでしょうか。
結果的に、財産や、人の信頼を失って不幸になるのではないでしょうか。
戒律は、自由で幸福な生き方をするためのルールなのです。
なぜ五戒を守るのか
戒律は、出家には無数にありますが、在家の方に一般に奨めているのは、次の、たった五つです。
- 不殺生戒(ふせっしょうかい)
生き物を殺さない。 - 不偸盗戒(ふちゅうとうかい)
他人のものを盗まない。 - 不邪婬戒(ふじゃいんかい)
不倫など、不道徳な性行為はしない。 - 不妄語戒(ふもうごかい)
嘘はつかない。 - 不飲酒戒(ふおんじゅかい)
酒や麻薬類は使用しない。
これを五戒といいます。
五戒は、お釈迦さまが、人が幸福に生きるために守るべき道徳を智慧の目で見て示されたものです。
なぜ、五戒を守るべきなのか?
それは、物事を目的どおりに成し遂げるため、つまり、成功するためです。
どういうことでしょうか。
それぞれ見ていきましょう。
不殺生戒
生き物を殺さない。
これは、他の生命を奪うことをやめる、ということです。
どんな生命にも生きる権利があります。
他の生命の権利を奪ってしまうと、自分の生きる権利も失われます。
生きる権利なしに、この世で成功できるでしょうか?
仏道の目的は、智慧(物事をありのままに観る能力)を開発して、二度と悩み苦しみが生まれない完全に安定した心の状態を得ることです。
他の生命の権利を奪うと、仏道の目的も達成できなくなります。
不偸盗戒
他人のものを盗まない。
これは、人の財産を奪うことをやめる、ということです。
人のものを奪うのではなく、仕事をして「これは私の分」と、堂々ともらえばよいのです。
他の財産の権利を奪ってしまうと、自分が財産を得る権利も失われます。
財産を得る権利なしに、この世で成功できるでしょうか?
他人のものを奪うと、仏道の目的も達成できなくなります。
不邪婬戒
不倫など、不道徳な性行為はしない。
これは、守るべきルールを破った行為をしない、ということです。
特に不倫は、相手から奪うことになります。
自分がルールを破ると、他人も自分に対してルール違反をします。
互いにルールを守ることなしに、この世で成功できるでしょうか?
守るべきルールを破ると、仏道の目的も達成できなくなります。
不妄語戒
嘘はつかない。
嘘をつくことも、人をだますことだから、相手の信頼を踏みにじる行為になります。
人の信頼を裏切ると、自分も信頼されて守られる権利がなくなります。
他人から信頼されることなしに、この世で成功できるでしょうか?
嘘をつくと、仏道の目的も達成できなくなります。
不飲酒戒
酒や麻薬類は使用しない。
お釈迦様は、酒の短所を6つあげられています。
- 酒に耽る(ふける)と目に見えてお金がなくなる
酒は高価なものなので、それに耽ると、財産を奪っていきます。 - 酒は喧嘩を拡大する
酔っている人には理性がないので、人の言うことをよく理解できなくなり、簡単に怒るようになります。
酔って喧嘩すると、収拾がつかなくなり、犯罪になることもあります。 - 酒は万病のもと
酒で肝臓が壊れることは皆知っています。
肝臓とは大きな臓器で、身体に入る栄養を管理するところでもあります。
酒は、脳細胞も破壊します。
脳細胞が壊れたら、アルコール依存症状態になります。
脳は成長させるべき臓器で、決して攻撃してはいけないのです。
また、酒は、身体の回復力をなくしていきます。
酒のせいで病弱な身体になったら人生の幸福は得られません。 - 酒に耽ると名誉を損なう
酒に酔うと、社会のしきたり、決まり、道徳、規則などを簡単に破ります。
社会的に立場がある人が酒で失敗する例を知っている方もいるのではないでしょうか。 - 酒に耽ると身体の隠すべきところを露出する
酒に酔うと、恥を知らない人間になるということです。
心を分類する【貪瞋痴の正体】という記事で、恥のない心を、無慚(むざん)といいましたが、まさに、酒は人を無慚にするのです。 - 酒に耽ると理性がなくなる
酒に耽ると、脳細胞も破壊し、智慧が弱くなっていくと、お釈迦様は説かれています。
仏道の目的は、智慧を開発して、二度と悩み苦しみが生まれない完全に安定した心の状態を得ることです。
なので、酒に耽ると、仏道の目的も達成できなくなります。
以上、今回は、五戒について解説しました。
[…] 一つのネットワークでできているという真理があります。 これは、慈悲喜捨だけではなく五戒の背景にもなります。 人が生きているということは、他の生命との関わりです。 私たちの […]