楽水

人々の創造が自由に表現できる舞台づくり

AIエージェントドリブン経営 DX ビジネス

AIエージェントドリブン経営はなぜ企業価値を増幅させるのか

投稿日:


ここでは、AIエージェントドリブン経営が企業価値を増幅させるメカニズム(仕組)について次の観点で説明します。

AIエージェントドリブン経営とは何か

AIエージェントドリブン経営とは、

社員一人ひとりが
AIエージェントと協働、共創しながら
仮説と検証を繰り返し
自律的に業務課題を解決することができる
科学的マネジメント

のことで、その目的は、人とAIエージェントが協働、共創することで、人が本来持っている創造力を解放すること
創造力の解放
です。
メンバーが本来持っている創造力を解放することができると、メンバーの価値創出能力が上がり、結果的に、企業価値を加速的に上げていく(増幅させる)ことができます。
AIエージェントは、自ら創造物を生み出すだけでなく、メンバーが本来持っている創造力を発揮できる状態をつくり、その解放を駆動する装置(創造力駆動装置)にもなるのです。
企業はAIを段階的に導入していきますが、AI活用のレベルを示したAI活用の成熟度モデルでいうと、レベル5で、人が本来持っている創造力を解放することができる状態になります。
なお、AIエージェントドリブン経営については、記事AIエージェントドリブン経営入門を参照してください。

AIエージェントドリブン経営のモデル

次の式は、AIエージェントドリブン経営の目的と基本原理を表す経営モデルで、AIエージェントドリブン経営が企業価値を増幅させるメカニズムを表しています。



FCF:フリーキャッシュフロー

このモデルの構成要素は次のようになります。

  • A
    資産量(Assets)。
    価値を生み出す源泉である資産の量。
    企業が価値創出に利用する資産の大きさを表します。資産には、有形の財務資産だけでなく、人的資産、情報資産、組織資産などの無形資産も含まれます。
    AIエージェントドリブン経営において、特に重要となる資産は次のようになります。

    • 組織資産
      メンバーやAIエージェント、および、それらが共有・遵守する価値観や、その価値観に基づく行動特性によって形成される組織文化。
      AIエージェントは、ソフトウェアとして実装されるので情報資産と考えることもできますが、ここでは、メンバーと協働、共創するパートナーとして位置づけています。
    • 情報資産
      ナレッジやアプリケーションソフトウェア。
      AIエージェントがアプリケーションソフトウェアのAPIを介して、企業の信頼できる業務データに安全にアクセスできるようにするために自律分散型データ基盤(Decentralized Autonomous Data Platform)を構築します。
    • 人的資産
      ジョブ、および、ジョブに必要なメンバーやAIエージェントの価値創出能力(知識・スキル)。
    • 財務資産
      ナレッジを蓄積し、アプリケーションソフトウェアやAIエージェントを動かすハードウェアやネットワークなどの固定資産。
  • p
    資産生産性(Asset Productivity)。
    資産が価値を生み出す効率。
    資産1単位当たりのFCF創出額を表します。
    FCF/Aで表されます。
    資産生産性は、AIエージェントドリブン経営を加速するレバレッジ(より少ない資産で、より大きな価値を生み出す作用:効果を増幅する働き)を表します。
    資産生産性に寄与するのは、メンバーとAIエージェントの価値創出能力(人的資産)と、それを発揮するための組織文化(組織資産)です。
  • V
    創出価値(Value Created)
    資産を活用することで生み出される経済的価値。
    FCFで表します。
    V=FCF=A×p。
  • d
    割引率(Discount Rate)。
    将来生み出される価値(FCF)を現在価値に換算するための率。
    資本の調達コストや将来の価値創出に伴うリスクを反映します。
  • n
    期間(Period)。
    現在から将来の価値(FCF)が生み出されるまでの経過期間。
    通常は年単位で表します。
  • N
    評価期間(Evaluation Period)。
    企業価値を算定するために、将来のFCFを評価する期間の長さ。
    通常は年数で表します。

さらに、このモデルを詳細化すると次のようになります。


  • A₀
    初期資産量(Initial Assets)
    評価開始時点における価値創出資産の量。
    資産の蓄積による将来の価値創出能力の成長を測定する基準となります。
  • p₀
    初期資産生産性(Initial Asset Productivity)
    評価開始時点における資産生産性。
    資産生産性(レバレッジ)の向上による将来の価値創出能力の成長を測定する基準となります。
  • rₐ
    資産成長率(Asset Growth Rate)
    価値創出資産が1期間当たりに増加する割合。
    資産の蓄積による価値創出能力の成長を表します。
  • rₚ
    資産生産性成長率(Asset Productivity Growth Rate)
    資産生産性が1期間当たりに向上する割合。
    レバレッジの向上による価値創出能力の成長を表します。

この式では、資産成長率と資産生産性成長率が一定でも、資産量と資産生産性は複利的(指数関数的)に増大します。
ここで、

であることを考えると、このモデルは、将来の各時点で生み出されるフリーキャッシュフローを割引率を用いて現在価値に換算し、その合計によって企業価値を算定するディスカウント・キャッシュフロー(DCF)法の式として表されます。



フリーキャッシュフローは次の式で求めることができます。

制約理論(TOC)の考え方を適用すると、


営業利益=スループット-業務費用


になります。
業務費用ですが、AIエージェントドリブン経営の場合、各種資産によって消費される人件費、トークンコスト、減価償却費などになります。


さて、このAIエージェントドリブン経営のモデルから、AIエージェントドリブン経営が企業価値を高める次の3つの基本原則が導かれます。


  1. 資産の蓄積(Accumulation)
    価値を生み出す資産(源泉)を継続的に蓄積する。
    これは資産の量を増やすことで実現します。
  2. レバレッジの向上(Leverage)
    資産が生み出す価値を増幅する。
    これは資産の質(能力)を上げることで実現します。
  3. リスクの低減(Risk Reduction)
    将来の価値創出の不確実性を低減する。

つまり、AIエージェントドリブン経営とは、企業コンテキストに基づき、メンバー(人)とAIエージェントが協働、共創して仮説検証(制約統制)を継続的・自律的に実行することで、価値創出資産の蓄積、レバレッジの向上、リスクの低減を実現し、企業価値を持続的に高める経営方式なのです。

次の図は、企業の資産を業務活動が消費し企業価値を上げ、それを資産にフィードバックすることで資産価値を上げるという価値逓増のサイクルを表しています。



上の3原則で考えると、資産価値を上げるとは、次の2つの意味が含まれていることがわかります。

  • 資産の量を増やす(資産の蓄積)
  • 資産の質(能力)を上げる(レバレッジの向上)

なお、資産の価値の消費(コスト)は、上述した業務費用になります。


さて、次の図は、AIエージェントドリブン経営における価値創出の自己強化循環を表しています。



この図には次の2つの自己強化循環(スパイラル)があります。

① 資産の蓄積(Accumulation)の自己強化循環(スパイラル)
ナレッジの蓄積
↓
メンバーとAIエージェントが蓄積されたナレッジを活用
↓
より高度な仮説検証・制約統制が可能になる
↓
より多くの実践ナレッジが生み出される
↓
さらにナレッジが蓄積される
これは、資産の蓄積が、さらなる資産の蓄積を促進する循環です。

② レバレッジの向上(Leverage)の自己強化循環(スパイラル)
メンバーとAIエージェントが体系的ナレッジを活用する
↓
メンバーとAIエージェントの価値創出能力が向上する
↓
資産生産性(レバレッジ)が向上する
↓
より高度な仮説検証・制約統制が可能になる
↓
さらに資産生産性が向上する
これは、資産生産性の向上が、さらなる資産生産性の向上を促進する循環です。

この2つは、次のような相互強化循環(スパイラル)になります。
資産量の増加
↓
蓄積されたナレッジの活用による価値創出能力の向上
↓
資産生産性(レバレッジ)の向上
↓
より高度で効率的な仮説検証・制約統制の実現
↓
より多くの実践ナレッジの創出
↓
資産蓄積の加速
↓
資産量のさらなる増加


さらに、仮説検証によるナレッジの蓄積は、メンバーに貢献による喜びをもたらし、ナレッジを活用することでメンバーが価値創出能力を上げることで、メンバーは成長による喜びを得ることができます。
この貢献と成長による喜びがメンバーの創造力を解放し、ますます、メンバーの価値創出能力を上げるとともにナレッジを蓄積していきます(自己実現のスパイラル)。



自己実現のスパイラル



これがAIエージェントドリブン経営によって企業価値が加速的に増加(増幅)していくメカニズムです。

最後に、仮説検証によるリスク低減について言及しておきましょう。
リスクを低減する主な要因は次の3つです。

  1. 安定性
    変動を抑える。
    まず、将来の成果が大きく変動しないようにします。
    安定性を上げるためにの施策の例は次のようになります。

    • 顧客分散による売上の安定化
    • 品質管理による不良率の低減
    • 業務標準化による生産性の安定化
    • 財務健全性の維持による資金繰りの安定化

    安定性が高まるほど、将来成果のばらつきが小さくなります。

  2. 予見性
    予測精度を高める。
    次に、将来何が起こるかを、より正確に把握できるようにします。
    予見性を上げるためにの施策の例は次のようになります。

    • KPIによる業績の先行管理
    • データ品質向上による予測精度の改善
    • 顧客行動分析による解約予測
    • 需要予測による生産計画の精度向上

    予見性が高まるほど、将来成果を予測しやすくなります。

  3. 適応性
    変化に適応できるようにする。
    最後に、予測できない変化が起きても、価値創出を維持できるようにします。
    適応性を上げるためにの施策の例は次のようになります。

    • 意思決定の分散による迅速な対応
    • ナレッジ共有による組織の柔軟性向上
    • 仮説検証による戦略の迅速な修正
    • 制約統制によるボトルネックへの迅速な対応

    適応性が高まるほど、予測できない変化による損失を抑えられます。
    ※ナレッジ共有による組織の柔軟性向上
    共通の判断基準と実践ナレッジがあることで、中央集権的な指示に依存せず、組織全体が柔軟に対応できるという意味です。

AIエージェントドリブン経営は次の3つを実現し、上述したリスク低減要因の適応性を向上させます。

  • ナレッジ共有による組織の柔軟性向上
  • 仮説検証による戦略の迅速な修正
  • 制約統制によるボトルネックへの迅速な対応

AIエージェントドリブン経営入門では、AIエージェントドリブン経営は、企業の成功力、適応力、継続力を上げると説明しました。
資産の蓄積とレバレッジの向上の自己強化循環は企業の成功力を上げます。
また、企業の適応力を上げることでリスクが下がり、結果的に、企業の継続力を上げます。

AIエージェントドリブン経営のプロセス

上述したように、企業価値を加速的に増大させるには、
仮説検証によるナレッジの蓄積がメンバーに貢献による喜びをもたらし、
ナレッジを活用することでメンバーが価値創出能力を上げ、メンバーに成長による喜びをもらたすことで、
メンバーの創造力を解放し、ますます、メンバーの価値創出能力を上げるとともにナレッジが蓄積されるという自己実現のスパイラルを起す必要があります。
次のAIエージェントドリブン経営における価値創出の自己強化循環の図を見ると、メンバーがナレッジを参照し仮説検証を実行するプロセスが自己実現のスパイラルのキーになることがわかります。



さらに、この仮説検証プロセスは、次の3つを実現し、企業の適応性を向上させます。

  • ナレッジ共有による組織の柔軟性向上
  • 仮説検証による戦略の迅速な修正
  • 制約統制によるボトルネックへの迅速な対応

ここでは、メンバーがナレッジを参照し仮説検証を実行するプロセスの具体的な仕組について説明します。
次の図は、事業ライフサイクルの全体像を表したものです。

事業ライフサイクルの戦略サイクルでは、

  1. 設計(Design)
    戦略マップの設計
  2. 戦略(Strategy)
    BSCの目標・実績管理
  3. 実現(Implementation)
    プロジェクト・プログラムの目標・実績管理
    実践プロセス・実験プロセスの実行

という流れで段階的に事業を遂行します。
それぞれのプロセスについて説明します。

設計(Design)

設計の段階では、事業の型のなるビジネスモデルと、価値創出シナリオである戦略マップを設計します。
事業ライフサイクルの図でいうと事業パーパスの左側にあるのが戦略マップです。
ビジネスモデルの一環として、実践プロセス・実験プロセスを設計します。
典型的な実践プロセスと実験プロセスは以下を参照してください。
典型的な実践プロセスと実験プロセス

戦略(Strategy)

戦略の段階では、戦略マップに基づき、戦略サイクルのBSCのKPIの目標値を設定します。
事業ライフサイクルの図でいうと戦略サイクルの左端のBSC目標があります。
典型的なBSCの例は以下を参照してください。
BSCの例

実現(Implementation)

最後に実現ですが、これは、戦略で設定したBSCの目標を実現するという段階です。
実現の段階では、戦略サイクルのプロジェクト・プログラムを作成します。
そして、事業ライフサイクルの図のように年、四半期、月ごとのマネジメントサイクル(PDCAサイクル)でプロジェクト・プログラムの目標と実績を管理します。
プロジェクト・プログラムの目標と実績は、BSCのKPIに対応するので戦略マップ→BSC→プロジェクト・プログラムという戦略の一貫性が担保されます。
典型的なプロジェクトの例は以下を参照してください。
プロジェクトの例
さて、事業ライフサイクルの図を見るとプロジェクトにPlan、Do、Check、Actとありますが、これがマネジメントサイクルのPDCA(計画・実行・検証・改善)です。
AIエージェントドリブン経営では実験プロセスを実行して仮説検証を行います。
実験プロセスは、デザイン思考の学習サイクルを取り入れて次のようなタスク構成になります。

  1. 問題の特定(観察)
  2. 原因の推定(原因仮説の立案:ボトルネックの特定)
    原因推定ガイドラインの例
    次の観点で原因仮説を立案してください。
    なぜ顧客は購入を決断しないのか?
  3. 課題の設定
  4. 解決策の考案(解決仮説の立案)
    解決策考案ガイドラインの例
    次の観点で解決仮説を立案してください。
    どんな提案・条件・説明なら購入するのか?
  5. 実験計画の策定(予測)
    実験計画策定ガイドラインの例
    次の観点で実験計画を策定してください。
    提案・条件・説明によって顧客が購入を決断した場合どうなるか?
  6. 実験の遂行(プロトタイプ)
    実験遂行ガイドラインの例
    AIエージェントは、新規顧客獲得の施策を実行する前にユーザーの承認を得ること。
    [human-gate]
  7. 解決策の検証(ユーザーテスト)
  8. 業務の改革・改善(学習・改善)
    業務の改革・改善ガイドラインの例
    次の内容を記述してください。
    検証結果:成功 ← ここを「成功」か「失敗」で明記
    学んだこと:〇〇
  9. ※()の中がデザイン思考の学習タスクです。

メンバーがAIエージェントと協働、共創して、この実験(仮説検証)プロセスを繰り返すのがAIエージェントドリブン経営プロセスの中核です。
実験プロセスを何回か繰り返した後、月、四半期、年単位にKPI実績を登録後、AIエージェントが次の検証改善プロセスを実行して制約を統制します。

  1. KPIの検証
  2. プロセス制約の統制
  3. 仮説制約の統制

プロセス統制とは、活動を実行するプロセスに存在し、必要な活動量の実現を妨げる制約のことです。
また、仮説統制とは、原因目標の実現が結果目標の実現につながるという因果関係の仮説に存在する制約のことです。
これらの詳細は、BSCの一般構造を参照してください。
KPI検証では、月、四半期、年単位で、プログラムの成果目標とプロジェクトの業績目標を検証します。
成果目標は、企業が実現したい価値や結果に関する目標で、BSCの財務の視点のKPI目標、顧客の視点のKPI目標が該当します。
業績目標は、成果を生み出すための活動や能力の達成状態に関する目標で、BSCの内部プロセスの視点のKPI目標、学習と成長の視点のKPI目標が該当します。
それから、業績目標は、さらに、業務活動や組織能力によって実現する成果の水準を率で表す結果目標と、結果目標を実現するために実行する活動の量を表す原因目標に分かれます。
各目標の詳細は、BSCの一般構造を参照してください。
検証改善プロセスでは、KPI検証の結果、原因目標が達成できていない場合、プロセス制約を統制し、原因目標は達成できているが結果目標が達成されない場合、仮説制約を統制します。
そして、原因目標も結果目標も達成できている場合、実験(仮説検証)プロセスの業務の改革・改善(学習・改善)タスクで学んだことをガイドラインとして一般化して、メンバーが参照してタスクを遂行できるようにします。
このガイドラインの積み重ねが組織ナレッジになります。
以上のように、AIエージェントドリブン経営では、
仮説検証によるナレッジの蓄積がメンバーに貢献による喜びをもたらし、
ナレッジを活用することでメンバーが価値創出能力を上げ、メンバーに成長による喜びをもらたす
プロセスが内在しています。
また、仮説検証による迅速な制約統制によって、次の3つを実現し、企業の適応性を向上させるように設計されています。

  • ナレッジ共有による組織の柔軟性向上
  • 仮説検証による戦略の迅速な修正
  • 制約統制によるボトルネックへの迅速な対応

-AIエージェントドリブン経営, DX, ビジネス

執筆者:

関連記事

戦略マップとBSC

ここでは、「AIエージェントドリブン経営入門」のAIエージェントドリブン経営の導入手順で示したAIエージェントドリブン経営の理論基盤の学習体系の中の「戦略マップとBSC」について説明します。 AIエー …

DXが必要な企業の問題と課題

DXによって 環境の変化に柔軟に適応し価値を創出し続ける持続可能性の高い体質を獲得したい と考える多くの企業が 事業創出・変革ができていない という問題を抱えているようです。 なぜでしょうか。 ここで …

会社の業務とシステムを体系的に整理する方法

ここでは、次の観点で、会社の業務とシステムを体系的に整理する方法について説明します。 ビジネスを構成する要素 会社の業務とシステムを体系的に整理する手順 活動領域の明確化 ジョブの定義 アプリケーショ …

【実践!DX】COBITをベースとしたITガバナンス・マネジメントの導入

企業がDXを進める上で参考になるITガバナンスとマネジメントのフレームワークにCOBITがあります。 COBIT(Control Objectives for Information and rela …

モデルドリブン開発で創るアプリケーションシステム

生成AIの激しい進化は、アプリケーション開発のやり方を劇的に変えようとしています。 生成AIベースの開発環境を使うことで、これまで数ヶ月かけて開発していたアプリを、数日で開発することもできます。 直近 …