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【実践!DX】産業機械メーカーのDX例

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ここでは、DXプロセスの方向づけフェーズのビジネスモデル設計プロセスに従って、産業機械メーカー、カルノ産業株式会社のビジネスモデルを考えることによって価値創出プロセスを具体的に説明したいと思います。

  1. 目的を明確にする【パーパスの再確認】
  2. ビジネスを概観する【現行ビジネスモデルの分析】
  3. 価値創造プロセス(戦略の本質)を設計する【戦略マップの作成】
  4. あるべきビジネスを設計する【将来ビジネスモデルの設計】
  5. ビジネスの評価指標を決める【KPIの定義】

目的を明確にする【パーパスの再確認】

カルノ産業株式会社の事業パーパスは、
製造業者に、安定操業、省エネ操業を実現する産業機械を提供すること
です。

ビジネスを概観する【現行ビジネスモデルの分析】

顧客の定義

この会社では、顧客である製造業者が望む価値観を次のように考えています。

  • 安定操業
    機械を止めずに安定して製品を製造したい。
  • 省エネ操業
    できるだけ少ないエネルギーを使って低コストで製品を製造したい。

製品の定義

そして、顧客の価値観を実現する製品価値を次のように考えます。

  • 故障が少なく信頼できる産業機械
  • より少ないエネルギーでパフォーマンスを出す高性能な産業機械

メンバーの定義

カルノ産業株式会社を構成するメンバーは、製造業とあって技術を追求するタイプが多く、競合他社より優れた技術を追求しより品質の高い製品を製造するというマインドセットが組織文化を形成しています。

パートナーの定義

カルノ産業株式会社の主なパートナーは、仕入先と運送会社です。

場所の定義

カルノ産業株式会社は、国内と海外に工場、倉庫、営業所を持っています。

活動の定義

下図は、カルノ産業株式会社の主要活動です。

製品開発後、製品を見込生産し、販売後、顧客の問い合わせや故障に対応するという流れになっています。

ジョブの定義

現在の主なジョブは、活動に合わせて次の図のようになっています。

カスタマーサポートが受けるクレームなどの情報を製品開発に活かすことが課題になっています。

情報資産の定義

現在、カルノ産業株式会社は、10年前に開発した基幹システムを使っており、要求の変化に対応して修正してきた結果、ツギハギだらけの機能が絡み合って複雑な状態になっています。

財務資産の定義

カルノ産業株式会社の主な財務資産は工場や倉庫、製造設備になります。

ビジネスプロセスの定義

次の図は、カルノ産業株式会社の営業活動(商流、物流、金流)を構成するビジジネスプロセスです。

現行、製品を販売した後、故障やメンテナンスが発生する都度、それをサービスとして販売し対応しています。
次に、カルノ産業株式会社の、あるべき価値創造プロセスを設計しましょう。

価値創造プロセス(戦略の本質)を設計する【戦略マップの作成】

下図は、カルノ産業株式会社の戦略マップです。

  1. 財務の視点
  2. 顧客の視点
  3. 內部プロセスの視点
  4. 学習と成長の視点

財務の視点

財務の視点には、株主に対する価値を提供するための財務目標を記述します。
財務の視点の財務目標には、「収益の増大」と「生産性の向上」があります。

顧客の視点

顧客の視点

には、「顧客は何によって心身の欲求を満たされるのか」という価値観(顧客価値)を記述します。
上述した顧客の定義で言及したように、顧客の価値観である

  • 安定操業
    機械を止めずに安定して製品を製造したい。
  • 省エネ操業
    できるだけ少ないエネルギーを使って低コストで製品を製造したい。

を実現することが収益の源泉であると考えます。
なので、顧客の視点の戦略マップは次のようになります。

內部プロセスの視点

內部プロセスの視点

には、內部のビジネスプロセスに求められる戦略目標と課題を記述します。
財務目標の「収益の増大」と「生産性の向上」に分けて見ていきましょう。

収益増大戦略

まず、製品価値である

  • 故障が少なく信頼できる産業機械
  • より少ないエネルギーでパフォーマンスを出す高性能な産業機械

を踏まえて、內部プロセスの視点の戦略目標を次のように設定します。

  1. 信頼性の高い製品の継続的創出
    故障が少なく信頼できる製品を継続的に開発し市場に投入する。
  2. 高性能な製品の継続的創出
    より少ないエネルギーでパフォーマンスを出す高性能な製品を継続的に開発し市場に投入する。
  3. 品質の高い運用保守の実現
    故障させない、故障してもすぐに回復させることができる運用保守を実現する。
  4. 顧客に信頼されるビジネスパートナー
    省エネに関する顧客課題を定義し、製品、あるいは、製品の組み合わせで、それを解決することができるビジネスパートナーを目指す。

「信頼性の高い製品の継続的創出」「高性能な製品の継続的創出」の戦略課題

まず、信頼性の高い製品の継続的創出と高性能な製品の継続的創出の部分です。
內部プロセスの視点には、戦略目標の下位には、それを達成するための戦略課題を設定します。

  • 製品品質の確保
    製品の高信頼性と高性能という品質を確保する必要がある。
  • 企画開発力の向上
    製品の高信頼性と高性能を継続的に進化させるために、技術開発力と製品企画力を上げる必要がある。
  • 開発リードタイムの短縮
    開発した製品をいち早く市場に投入することで競争優位性を確保する。

「品質の高い運用保守の実現」の戦略課題

次に、戦略目標「品質の高い運用保守の実現」について見てみましょう。
この場合、戦略課題は次の2つです。

  • 故障させない・故障してもすぐに回復させる運用保守の仕組化
  • 部品の安定供給

「顧客に信頼されるビジネスパートナー」の戦略課題

最後に、戦略目標「顧客に信頼されるビジネスパートナー」について見てみましょう。
この場合、戦略課題は次の2つです。

  • 顧客の課題を解決できる販売の仕組化
  • 顧客の課題を解決できるサービスの仕組化

生産性向上戦略

次に、カルノ産業株式会社の生産性向上戦略について説明します。
生産性向上戦略の戦略目標は次の3つです。

  1. データドリブン経営の実現
    社員一人ひとりがデータを活用して自律的に業務課題を解決することができる状態にする。
  2. 経営管理の効率化
    経営管理に必要なデータがすぐに分析できるようにして意思決定のスピードを上げる。
  3. 製造の効率化
    製造プロセスを標準化、効率化する。

「データドリブン経営の実現」の戦略課題

まず、戦略目標「データドリブン経営の実現」について見てみましょう。
戦略課題は次の3つです。

「経営管理の効率化」の戦略課題

次に、戦略目標「経営管理の効率化」について見てみましょう。
戦略課題は「経営分析の効率化」です。

「製造の効率化」の戦略課題

最後に、戦略目標「製造の効率化」について見てみましょう。
戦略課題は「生産管理の効率化」です。

学習と成長の視点

学習と成長の視点

には、人的資本、情報資本、組織資本の目標と課題を記述します。

人的資本

人的資本の場合、戦略課題を解決する職務(ジョブ)を人的資本目標とし、目標を達成するための課題を人的資本課題として設定します。
まず、戦略目標「信頼性の高い製品の継続的創出」と「高性能な製品の継続的創出」から見ていきましょう。

「企画開発力の向上」という戦略課題を解決するための人的資本目標として技術開発機能の強化、課題を達成するための人的資本課題として知識・経験・探究心のある技術者の採用を設定します。
同様に、「企画開発力の向上」という戦略課題を解決するための人的資本目標として製品企画機能の強化、課題を達成するための人的資本課題として製品企画要員の採用を設定します。
技術開発要員や製品企画要員の具体的な責任やスキルは、職務定義書(ジョブディスクリプション)で定義します。
次に、戦略目標「品質の高い運用保守の実現」について見てみましょう。

「故障させない・故障してもすぐに回復させる運用保守の仕組化」という戦略課題を解決するための人的資本目標として保守機能の強化、それを解決する人的資本の課題として以下を設定します。

  • 保守要員の採用
    機械を修理する保守要員を増強します。
  • 保守要員の育成
    故障してもすぐに機械を回復させることができるよう保守要員を教育します。

なお、保守要員の具体的な責任やスキルは、職務定義書(ジョブディスクリプション)で定義します。
最後に、戦略目標「顧客に信頼されるビジネスパートナー」について見てみましょう。

人的資本目標として販売機能の強化、それを解決する人的資本の課題として以下を設定します。

  • 販売要員の採用
    販売要員を増強します。
  • 販売要員の育成
    顧客の課題を解決する提案ができるよう販売要員を教育します。

なお、販売要員の具体的な責任やスキルは、職務定義書(ジョブディスクリプション)で定義します。
次に、人的資本目標としてカスタマーサービス機能の強化、それを解決する人的資本の課題として以下を設定します。

  • カスタマーサービス要員の採用
    カスタマーサービス要員を増強します。
  • カスタマーサービス要員の育成
    顧客の課題を解決することができるようカスタマーサービス要員を教育します。

なお、カスタマーサービス要員の具体的な責任やスキルは、職務定義書(ジョブディスクリプション)で定義します。

情報資本

情報資本の場合、戦略課題を解決するアプリケーションを情報資本目標とし、目標を達成するために求められる機能を情報資本課題として設定します。
情報資本課題は、アプリケーションに対する機能要求になります。
まず、戦略目標「信頼性の高い製品の継続的創出」と「高性能な製品の継続的創出」から見ていきましょう。

まず、「製品品質の確保」という戦略課題を解決するための情報資本目標としてPLMの導入、PLMに求められる機能として品質検査データの管理を設定します。
これは、製品を受注したとき(受注生産の場合)、製造したとき、出荷するとき、客先で機械を設置するときと、各段階で品質検査を行い、その結果データを記録する機能です。
これは、プロセス品質を担保するという考え方に基づいています。
品質には、製品やサービスの品質であるプロダクト品質のほか、製品やサービスを生み出すための過程にも品質があり、これをプロセス品質といいます。
品質を考える場合、プロダクト品質だけでなく、プロセス品質を考えることも重要です。
高品質な製品が一つ出来たとしても、それが偶然の産物であっては意味がありません。
安定して高品質な製品やサービスを生み出し続けるためには、生産の過程そのものが高品質である必要があります。
生産工程の細分化と分業が進む昨今、生産開始段階から各工程でしっかり品質を作り込んでいくという姿勢が大変重要です。
同様に、「製品品質の確保」という戦略課題を解決するための情報資本目標として「製造ノウハウの蓄積」、それを実現するための情報資本課題として「製造タスクガイドラインの蓄積」を設定します。
これは、将来の生産プロセスの自動化(FA)を見据えた準備になります。
次に、「開発リードタイムの短縮」という戦略課題を解決するための情報資本目標としてPLMの導入、PLMに求められる機能として以下を設定します。

  • 製品情報の一元管理
    まず、製品情報が散在しないようにPLMで一元管理します。
  • 各種BOMの統合
    製造業で用いられる部品表の一形態であるにBOM(Bills of materials)があります。
    BOMには、設計BOM、製造BOM、サービスBOM、購買BOMなど用途によって分類されますが、PLMは、それらBOM全体を統合し整合性を保持することで、設計から製造、サービス、購買間の情報のズレをなくし、新製品開発、設計変更時に市場に投入するまでのリードタイムを短縮することができます。
  • 仮想プロトタイピング
    仮想プロトタイピングとは、実際に物理的な試作品を作成せずに、製品の設計や機能を仮想的に再現することで、本機能によって、製品の開発プロセスを加速し、コストを削減することができます。
  • コンカレントエンジニアリング
    製品設計によって生成される設計BOMをベースに、製造BOMを自動生成することができます。
    その際、設計図(3Dモデル)のステータスを管理することで、製品設計と生産準備の過程をコンカレントに進めることができ、開発リードタイムを短縮することができます。

次に、戦略目標「品質の高い運用保守の実現」について見てみましょう。

まず、「故障させない・故障してもすぐに回復させる運用保守の仕組化」という戦略課題を解決するための情報資本目標としてPLMの導入による製品トレーサビリティの強化、PLMに求められる機能として以下を設定します。

  • 部品のシリアルナンバー管理
    製品を製造する際に、製品やその部品に対してユニークなシリアル番号を割り当てます。
    これにより、製品の個々の部品や個体を識別し、追跡できるようになります。
  • ロットトレーシング
    ロットトレーシング機能により、製品を構成する部品がどのロット(バッチ)に属しているかを追跡できます。
    部品のロット情報を紐づけることで、特定のバッチの製品や部品の情報を簡単に取得でき、事前に故障を防ぐことができます。
  • 運用保守イベント管理
    製品の部品交換などの重要なイベントを記録し、製品の個体に関する情報を更新します。
    イベントのタイムスタンプや内容に基づいて、製品の履歴やトレーサビリティを確保します。
    また、運用保守イベント情報は、サービスの提供情報としてサービス管理システムに連携されます。

同様に、「故障させない・故障してもすぐに回復させる運用保守の仕組化」という戦略課題を解決するための情報資本目標としてIoTを活用した予知保全システムの導入、予知保全システムに求められる機能として以下を設定します。

  • 製品の状態監視
    製品にセンサーやIoTデバイスを組み込むことで、PLMはセンサーデータを取り込み、製品の個々の状態をリアルタイムでモニタリングできます。
    これにより、製品の使用状況やパフォーマンスをトラッキングし、必要な場合に部品の交換を行う計画を立てることができます。
  • AIを活用した製品の状態分析とレポート
    機械学習アルゴリズムを使用してセンサーデータを解析し、故障の特徴を学習させることができます。
    正常な動作と異常な動作のパターンを機械学習モデルに学習させ、新しいデータが与えられた際に異常を検知することが可能です。

次に、「部品の安定供給」という戦略課題を解決するための情報資本目標として「ERPの再構築」、ERPに求められる機能として以下を設定します。

  • 生産計画とスケジューリング
    SCMは、製造プロセスの計画とスケジュールを最適化します。
  • 仕入先に対するフォーキャスト
    SCMシステムを使用して得られた需要予測情報を基に、仕入先に対して製品の需要の見込みを共有します。
    これにより、仕入先も需要の予測に基づいて製品を適切なタイミングで供給することが可能になります。
  • 在庫レベルの監視
    在庫レベルをリアルタイムで追跡し、在庫が最適なレベルになるように計画します。
  • 部品の自動発注
    在庫が一定のレベル以下になると、自動的に新しい注文を生成します。

最後に、戦略目標「顧客に信頼されるビジネスパートナー」について見てみましょう。

まず、戦略課題「顧客の課題を解決できる販売の仕組化」を解決する情報資本目標にSFAの導入、SFAに求められる機能に以下を設定します。

  • 連絡履歴とスケジュール管理
    SFAには、顧客とのコミュニケーション履歴を記録し、予定されたアクションやタスクをスケジュールする機能があります。
    これにより、営業担当者は迅速にフォローアップすることができます。
  • セールスプロセスの自動化
    SFAは、見積もり、請求書、受注などのセールスプロセスを自動化する機能を提供します。
    これにより、手作業の作業が減り、エラーが少なくなります。
  • 販売予測とレポート
    営業活動に関連するデータを収集し、販売予測や売上レポートを生成します。
    これにより、経営者や営業マネージャーはビジネスの健全性を把握し、意思決定に活用できます。
    それから、本販売予測データは、上記ERPの「仕入先に対するフォーキャスト機能」に活用されます。
  • モバイルアクセス
    多くのSFAは、モバイルデバイスを介して情報にアクセスできるように設計されています。
    営業担当者は外出先でも顧客情報にアクセスし、タスクを管理できます。

また、情報資本目標CRMの導入、CRMに求められる機能として以下を設定します。

  • 顧客行動データの収集と分析
    顧客行動データの収集
    顧客の購買履歴、コンタクト履歴、キャンペーンデータなどを分析し、顧客行動の傾向を把握することで、顧客をセグメンテーションしたり、顧客行動や需要を予測することができます。
    具体的には次のような機能になります。

    • 購買履歴
      顧客の購買履歴をデータベースに記録し、購入した商品やサービス、取引金額などを追跡します。
    • コンタクト履歴
      電話、メール、チャットなどのコミュニケーション履歴を記録し、顧客との関係を把握します。
    • メールキャンペーンデータ
      送信されたメールの開封率、クリック率などのデータを収集します。
  • 顧客行動データの分析
    • データの統合
      さまざまなデータソースから収集した顧客行動データを統合し、一つの全体像を作ります。
    • パターンの発見
      顧客行動データから傾向やパターンを見つけ出し、顧客の行動傾向を理解します。
    • セグメンテーション
      顧客を異なるセグメントに分類し、それぞれのセグメントの特性を把握します。
    • 顧客価値の評価
      顧客の重要度や価値を評価し、優先すべき顧客を特定します。
    • 予測分析
      データから将来の顧客行動や需要を予測し、適切な戦略を立てます。
  • マーケティングオートメーション
    マーケティング活動の自動化を支援する機能で、電子メールキャンペーン、顧客セグメンテーション、追跡などが含まれます。
  • マーケティング効果のフィードバック
    顧客データを収集し分析することで、マーケティング活動の効果を把握できるので、それを施策にフィードバックすることで、マーケティング効果を最大化することができます。
  • VRを活用したセールスプロモーション
    VRを使ったショールーム、および、製品機能の説明によって、顧客は、効果的に製品を理解できるようになります。

次に、戦略課題「顧客の課題を解決できるサービスの仕組化」を解決する情報資本目標にCRMの導入、CRMに求められる機能に以下を設定します。

  • 顧客情報の一元管理
    顧客の基本情報(氏名、連絡先、メールアドレス、履歴など)を集約・管理し、中央データベースに保存します。
  • カスタマーサポート
    顧客からの問い合わせやサポートリクエストを追跡・管理し、迅速かつ適切な対応を行うための機能です。
    そのために、顧客とのコミュニケーション履歴を追跡し、過去の対話内容や問題解決の経緯を確認することができます。

次に「生産性の向上」戦略の情報資本について見ていきましょう。

次のような内容になっています。

  • 「ビジネスプロセスマネジメントの実現」課題に対する情報資本目標としてBPM基盤の構築を設定しています。
  • 「アプリケーションマネジメントの実現」課題に対する情報資本目標としてアプリケーション基盤の構築を設定しています。
  • 「データマネジメントの実現」課題に対する情報資本目標としてデータ基盤の構築を設定しています。
  • 「経営分析の効率化」課題に対する情報資本目標として経営分析システムの開発を設定しています。
  • 「生産管理の効率化」課題に対する情報資本目標としてERPの導入を設定しています。

組織資本

戦略目標である「顧客に信頼されるビジネスパートナー」を実現するために、顧客の成功(ゴール)を理解した上で、顧客の課題を発見し、それを解決するという能動的なサービスに切り替えるためには、製品提供型の考え方から顧客課題解決型の考え方、つまり顧客の立場に立って考えることができるよう、メンバーのマインドセットを切り替えていく必要があります。
そこで、カルノ産業株式会社は、
カスタマーサクセス(顧客の成功)を中心に考える
という価値観を経営理念に追加し、組織資本として醸成することにしました。

ディフェンシビリティの検証

それでは、ここで、戦略目標「顧客に信頼されるビジネスパートナー」の学習と成長の視点の組織資本、人的資本、情報資本に、持続的な成長を可能とする競争優位性、ディフェンシビリティ(Defensibility:防御可能性)があるか検証しましょう。
まず、組織資本ですが、会社を構成するメンバー全員が
カスタマーサクセス(顧客の成功)を中心に考える
というマインドセット(価値観)を持っていれば、それは強い競争優位性を生み出すと思います。
次に、人的資本ですが、顧客の課題を解決する提案ができるよう販売要員や顧客の課題を解決することができるようカスタマーサービス要員という人的資産が蓄積されると、それは競争優位性を生み出すと思います。
最後に情報資本ですが、SFAやCRMを導入しても、競合他社が同じようなSFA、CRMの機能を実装すれば競争優位性は築けません。
そこで、カルノ産業株式会社は、情報資本目標として販売ノウハウの蓄積を追加し、その課題を次のように設定しました。

  • 販売タスクガイドラインの蓄積
  • SFAの効果的使い方の蓄積
  • CRMの効果的使い方の蓄積

同様に、情報資本目標としてサービスノウハウの蓄積を追加し、その課題を次のように設定しました。

  • サービスタスクガイドラインの蓄積
  • CRMの効果的使い方の蓄積

これによって、タスクを実行するときのノウハウや、SFAやCRMを導入し、その効果的使い方が情報資産として蓄積され、競争優位性を築くことができます。
次の図は、上記情報資本目的と課題を追加した戦略目標「顧客に信頼されるビジネスパートナー」の戦略マップです。

あるべきビジネスを設計する【将来ビジネスモデルの設計】

次に、戦略マップの結果から、主に次の観点で、あるべきビジネスモデルを設計します。

  • 內部プロセスの視点の戦略目標を実現する活動の設計
  • 內部プロセスの視点の戦略課題を解決するビジネスプロセスの設計
  • 学習と成長の視点の人的資本目標を実現するジョブの設計(ジョブの構成)
  • 学習と成長の視点の情報資本目標を実現する情報資産の設計
  • 学習と成長の視点の情報資本目標を実現するメンバーの設計

なお、これら以外、例えば顧客や製品など現行ビジネスモデルとして定義した内容は踏襲されます。

  1. 活動の設計
  2. ビジネスプロセスの設計
  3. ジョブの設計
  4. 情報資産の設計
  5. メンバーの設計

活動の設計

戦略目標を上の4つに定めたカルノ産業株式会社は、特に「品質の高い運用保守の実現」と「顧客に信頼されるビジネスパートナー」を実現するために、ビジネスモデル(活動の構成)を次のように変更することにしました。

従来、この会社は、製品を作って販売した後は、アフターサービスの一環として、顧客からの問い合わせや故障に対応する運用保守サービスを実施していました。
しかし、上述した戦略目標を実現するためには、従来のような受動的なサポートではなく、顧客の成功(ゴール)を理解した上で、顧客の課題を発見し、それを解決するという能動的なサービスを行う必要があると考えました。
そこで、カルノ産業株式会社は、製品を販売した後、月単位または年単位で定期的に料金をいただいて提供する運用保守サービス、つまり、サブスクリプション型の運用保守サービスに切り替え、より付加価値の高いサービスを提供することにしました。
ビジネスモデルを変更し、製品を販売する際、運用保守サービスをサブスクリプションとして販売するため、従来、故障やメンテナンスなどのサービスを販売するビジネスプロセスが不要になります。

ビジネスプロセスの設計

主要活動のうち、販売活動とカスタマーサービス活動のビジネスプロセスを再設計します。

販売プロセスの設計

「顧客の課題を解決できる販売の仕組化」という戦略課題を解決するため、販売プロセスを次のように再設計しました。

インサイドセールスを組み込むことによってCPAを削減することができます。

カスタマーサービスプロセスの設計

従来は、製品を作って販売した後、アフターサービスの一環として、顧客からの問い合わせや故障に対応する運用保守サービスを実施していました。
今後は、「顧客の課題を解決できるサービスの仕組化」という戦略課題を解決し、顧客の成功(ゴール)を理解した上で、顧客の課題を発見し、それを解決するという付加価値の高いサービスを行う必要があるため、カスタマーサービスプロセスを次のように設計しました。

ジョブの設計

戦略課題である「企画開発力の向上」を実現する一環として、製品企画機能を強化するためジョブの構成を次のように見直しました。

情報資産の再設計

今回の戦略を実現すると次のような情報資本ポートフォリオになります。

赤色の部分は既に導入済を表しています。
緑色の部分が、今回、導入するアプリケーションと情報システム基盤を示しています。
販売ノウハウやサービスノウハウは、データレイクに蓄積されていきます。
また、現在、アプリケーションの情報資本ポートフォリオのうち、ERPの範囲は基幹システムとして実現されています。
これらのアプリケーションをEAI/ESBを介して連携させると次のようなアプリケーションアーキテクチャになります。

データ基盤、および、EAI/ESBを介したデータ連携も考慮して基幹システムを構築する必要があります。
左川産業株式会社のDX投資計画については「DX投資計画の例」を参照ください。

メンバーの設計

カルノ産業株式会社は、「カスタマーサクセス(顧客の成功)を中心に考える」という価値観を経営理念に追加し、組織資本として醸成することにしました。
そこで、メンバーに求める価値観として「カスタマーサクセス(顧客の成功)を中心に考える」を設定します。

ビジネスの評価指標を決める【KPIの定義】

ここでは、戦略目標「顧客に信頼されるビジネスパートナー」に関するKPIを定義します。

まず、財務目標「収益の増大」の結果を図るKPIのとして、LTV(顧客生涯価値)を設定します。
LTV=(顧客単価×粗利率×購買頻度×取引期間)-(顧客の獲得コスト+顧客維持コスト)。
なお、顧客の獲得コストは、CPA(Cost Per Acquisition)といいます。
次に、顧客価値「省エネ操業」を測るKPIとしてエネルギー消費量削減率エネルギー使用効率を設定します。

  • エネルギー消費量削減率(Energy Consumption Reduction Rate)
    これは、前年度やベースラインに比べて、どれだけエネルギー消費を削減したかを示す指標です。
    削減率が高いほど、より効率的なエネルギー使用が行われていることを示します。
  • エネルギー使用効率(Energy Use Efficiency)
    このKPIは、製品の生産やサービス提供などの活動において使用されたエネルギー量と、得られた成果や生産物の価値を比較します。
    より高いエネルギー使用効率は、より少ないエネルギーで同等の成果を達成していることを示します。

次に、戦略目標「顧客に信頼されるビジネスパートナー」の結果を図るKPIのとして、解約率平均サービス継続期間を設定します。
次に、戦略課題「顧客の課題を解決できる販売の仕組化」の結果を測るKPIとして対引合販売実施率コンバージョンレート(受注に至った割合)を設定します。
対引合販売実施率は、引合に対して、どれだけ課題解決型の提案ができたかを測る指標です。
次に、情報資本目標「SFAの導入」の結果を測るKPIとしてSFA機能適合率(ユーザーの要求とSFAの機能要件はどの程度合致しているか)を設定します。
次に、情報資本目標「CRMの導入」の結果を測るKPIとしてCRM機能適合率(ユーザーの要求とCRMの機能要件はどの程度合致しているか)を設定します。
次に、人的資本目標「販売機能の強化」の結果を測るKPIとして販売要員採用数販売要員育成率を設定します。
最後に、情報資本目標「販売ノウハウの蓄積」の結果を測るKPIとして販売ノウハウ蓄積数を設定します。
次に、戦略課題「顧客の課題を解決できるサービスの仕組化」の結果を測るKPIとして対受注サービス実施率月平均顧客満足度を設定します。
対受注サービス実施率は、受注した案件に対して、どれだけ顧客の課題を解決したかを測る指標です。
次に、情報資本目標「CRMの導入」の結果を測るKPIとしてCRM機能適合率(ユーザーの要求とCRMの機能要件はどの程度合致しているか)を設定します。
次に、人的資本目標「カスタマーサービス機能の強化」の結果を測るKPIとしてカスタマーサービス要員採用数カスタマーサービス要員育成率を設定します。
最後に、情報資本目標「サービスノウハウの蓄積」の結果を測るKPIとしてサービスノウハウ蓄積数を設定します。

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