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【実践!DX】情報資本ポートフォリオとDX投資

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今回は、情報資本ポートフォリオとDX投資について以下の観点で説明します。

戦略マップとDX投資

戦略マップは、「財務の視点」「顧客の視点」「内部プロセスの視点」「学習と成長の視点」という4つの視点から構成されており、それぞれの視点における戦略的な目標(組織や企業が達成したい長期的な成果や目標)や課題の因果関係によって成立します。
戦略マップは、事業戦略を受けて、それに対応するBSC(バランス・スコアカード)と、それを構成するKPIの目標値を達成するためのアクションプランに展開され、実行されます。

具体的には、DXプロセスの方向づけフェーズで、次のような流れで戦略マップがDX投資計画に展開されます。

ここでは、內部プロセスの視点の戦略課題を解決するための投資を業務変革投資、学習と成長の視点の組織資本を構築するための投資を組織資本構築投資、人的資本を構築するための投資を人材投資、情報資本を構築するための投資をDX投資と位置づけています。
さて、ここで、ビジネスモデル、事業戦略、投資計画、アクションプランの関係を例を使って説明します。
例えば、戦略マップの一部が次のようになっていたとします。

この場合、データマネジメントの部分は、下から、「データ基盤の構築」→「データマネジメントの実現」→「データドリブン経営の実現」→「生産性の向上」→「企業価値の向上」という因果関係になります。
この部分のビジネスモデル、事業戦略、投資計画、アクションプランの関係は次のようになります。

  • 事業ドメイン単位に、パーパスとビジネスモデルがあります。
  • それを具体化したものが、事業単位(BusinessUnit)のビジョンと事業戦略になります。
  • ビジネスモデルの戦略マップの各視点の目標や課題の因果関係が事業単位のプロジェクトの因果関係として展開されます。
  • 各プロジェクトごとにKPIの目標が設定され、それを実現するたの投資計画とアクションプランが策定されます。
    • まず、事業ドメインの財務目標である「企業価値の向上」を測るKPI、ROIC(投下資本利益率)の目標値が事業単位に設定されます。
    • 次に、事業ドメインの戦略マップの財務目標である「生産性の向上」に対応するのが、事業単位の「生産性向上プロジェクト」になり、KPIである投下資本回転率、売上高営業利益率の目標値と、それを実現するための投資計画、および、アクションプランが生産性向上プロジェクトに策定されます。
    • 次に、戦略マップの內部プロセスの視点の戦略目標である「データドリブン経営の実現」に対応するのが、事業単位の「データドリブン経営の実現プロジェクト」になり、KPIである「データを活用した業務改善実施数/年」の目標値と、それを実現するための投資計画、および、アクションプランが「データドリブン経営の実現プロジェクト」に策定されます。
    • 次に、戦略マップの內部プロセスの視点の戦略課題である「データマネジメントの実現」に対応するのが、事業単位の「データマネジメントの実現プロジェクト」になり、KPIである「データ品質目標達成率」、「データ活用件数/年」の目標値と、それを実現するための投資計画、および、アクションプランが「データマネジメントと導入プロジェクト」に策定されます。
    • 最後に、戦略マップの学習と成長の視点の情報資本目標である「データ基盤の構築」に対応するのが、事業単位の「データ基盤構築プロジェクト」になり、KPIである「データ基盤装備率」の目標値と、それを実現するための投資計画、および、アクションプランが「データ基盤構築プロジェクト」に策定されます。
  • なので、結果的に、各プロジェクトのKPI目標の実現の結果として事業単位のKPI目標が実現するという因果関係になります。
    なお、各KPI目標/実積をまとめたものがBSC(バランス・スコアカード)です。

なお、この例の場合、先程の投資分類でいうと、內部プロセスの視点の戦略目標である「データドリブン経営の実現」と戦略課題「データマネジメントの導入」に関する投資が業務改革投資になり、学習と成長の視点の情報資本目標である「データ基盤の構築」がDX投資ということになります。
それから、投資計画ですが、これは、次の一般的な予算体系の中でいうとフリーキャッシュフローを使った投資予算の計画になります。

情報資本ポートフォリオ

次に、情報資本ポートフォリオ(情報システム基盤とアプリケーションの構成)とはどのようなものか見ていきましょう。
書籍「戦略マップ」では、アプリケーションと、それを支えるITインフラを分類した情報資本ポートフォリオに基づいて投資の資源配分を行うことを推奨しています。

さて、記事「DX戦略の考え方」では、DXの戦略マップについて説明しました。

また、戦略マップの土台となるのが企業情報基盤であり、DXのベースとなる企業の中枢神経になることも説明しました。

そこで、ここでは、企業情報基盤の物理基盤を構成する各種基盤とアプリケーションの構成から成る情報資本ポートフォリオを次のように定義します。

企業情報基盤の物理基盤を構成する各種基盤を、ここでは「情報システム基盤」と定義しています。

次の図は、情報システム基盤として、アプリケーション基盤データ基盤BPM基盤を構築した場合のアプリケーションアーキテクチャを表したイメージです。

基幹システムを構成する各アプリケーションがEAI/ESBやデータ基盤を介してデータ連携していることがわかります。
また、BPM基盤としてワークフローやRPAを導入していることもわかります。
次にアプリケーションですが、アプリケーションのうち、トランザクション処理アプリケーションを、企業情報基盤・アプリケーション基盤のERP、分析アプリケーションと変革アプリケーションを戦略的アプリケーションと位置づけます。

ERPとは、一般的に、企業全体を経営資源の有効活用の観点から統合的に管理し、経営の効率化を図るための手法・概念のことですが、ここでは、企業全体を経営資源(人、物、金、情報)の有効活用の観点から統合的に管理するアプリケーションという意味で用いています。

また、業務管理のアプリケーションをSCMと位置づけます。

さらに、そのうち販売活動の部分をSFAと位置づけます。

顧客管理のアプリケーションをCRMと位置づけます。

また、製品管理のアプリケーションをPLMと位置づけます。

DX投資計画の例

それでは、具体的に、情報資本ポートフォリオを使ったDX投資計画について見ていきましょう。
上述したように、BSCを定めた後、業務変革、組織文化構築、人材変革、DX全体に対する投資配分を決めます。
なので、ここでは、DXに対する投資金額が決まっているものとします。
次の図は、情報資本ポートフォリオを使ったDX投資計画の例です。

赤色の部分は既に導入済を表しています。
緑色の部分が、今回、DXとして投資するアプリケーションと情報システム基盤を示しています。
トランザクション処理アプリケーションには、既に導入されているものもありますが、アプリケーション基盤のERPとして再構築されます。
さて、緑色の部分を見ると、各領域の投資配分と投資額が明記されています。
新しく構築されるトランザクション処理アプリケーション(緑色の部分)は、ERPの再構築の投資額に含まれています。
DX投資計画が策定されたら、それを考慮した上でDXマスタープランを策定します。

DXマスタープランは、検証フェーズ構築フェーズ移行フェーズから構成されています。
これを見ると、一定期間コストをかけてDX全体の検証していることがわかります。
検証フェーズでは、ビジネスの魅力性(Desirability)、実行可能性(Viability)、実現可能性(Feasibility)を検証します。
この例の場合、情報システム基盤として、アプリケーション基盤、データ基盤、BPM基盤を構築する計画になっているので、アプリケーション間のデータ連携も含めて技術的実現可能性をしっかり検証する必要があります。

上記マスタープランを見ると次のことがわかります。

  • ERP再構築、分析システム、変革システムの順でアプリケーションを導入している。
  • 各アプリケーション導入時に、アプリケーション間のデータ連携部分を開発する必要があるので、それに合わせてEAIの構築を行っている。
  • ERP再構築時に、マスター共有ハブの構築を行っている。
  • 分析システム構築時に、DWHの構築を行っている。
  • ERP再構築後にBPM基盤であるワークフローとRPAを導入している。

なお、マスタープランは、詳細のアクションプランをまとめた主要なアクションプランのことです。
DXは、次の例のように、各システムごとにプロジェクトを分けて進めます。

なので、各プロジェクトごとに個別のアクションプランを策定します。

【関連動画】

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