ここでは、DXによって実現される変革アプリケーションについて、次の観点で説明します。
DX戦略マップの概要
これは、DXの戦略マップを表した図です。
DX戦略マップは、企業情報基盤とマネジメント基盤という土台の上で、データドリブン経営が実現され、データドリブン経営の過程で変革アプリケーションが創出され、結果的に、革新的な生産性の向上をもたらすとともに、新規事業の創出、既存事業の変革を通して顧客価値を創出し、結果的に企業価値を最大化します。
変革アプリケーションとは
ロバート S. キャプラン、デビッド・P. ノートンによって書かれた書籍「戦略マップ」では、アプリケーションを次の3つに分類しています。
- トランザクション処理アプリケーション
企業の基本的な定型業務を自動化するアプリケーション。 - 分析アプリケーション
分析、解釈、情報と知識の共有を促進するアプリケーション。 - 変革アプリケーション
企業の現行のビジネスを変革するアプリケーション。
変革アプリケーションは、IoTやAI、ブロックチェーンなど最新の技術を活用したアプリケーションで、革新的な生産性の向上をもたらすとともに、新規事業の創出、既存事業の変革を通して顧客価値を創出し、結果的に企業価値を最大化します。
上の図は、変革アプリケーションを含むシステム全体のイメージを表しています。
ここでは、システムを次の3つに分類しています。
- SoR(System of Record:記録システム)
- SoI(System of Insight:分析システム)
- SoRなどのデータを活用し、分析・予測を行うシステム。
- ビッグデータ、AI、機械学習を活用し、意思決定や最適化を支援する。
- DWH(データウェアハウス)、BI(Business Intelligence)、データレイクなどが含まれる。
- 例: BIツール(Tableau、Power BI)、データ分析プラットフォーム(Google BigQuery、Snowflake)
- SoE(System of Engagement:エンゲージメントシステム)
- ユーザーや顧客と直接やり取りし、エクスペリエンスを提供するシステム。
- モバイルアプリ、Webアプリ、SNS、チャットボットなど、ユーザーインターフェースを通じたインタラクションを重視。
- 高速なレスポンスと柔軟なUI/UXが求められ、マイクロサービスやAPI連携が活用される。
- 例: モバイルアプリ(LINE、Facebook)、ECサイト(Amazon、Shopify)、カスタマーサポートチャット(Zendesk)
SoRが上記トランザクション処理システム、SoIが上記分析システム、SoEが上記変革アプリケーションです。
変革アプリケーションの特徴
上図を見てもわかるように、変革アプリケーションは、SoRやSoIをベースにしています。
ここでは、変革アプリケーションの特徴を見ていきましょう。
変革アプリケーションの特徴は次の3つです。
- システムエンジニアではなく、業務担当者が自らの業務課題を解決するために開発する
- 生成AIを駆使したノーコードAIツールによって開発される
- 1ヶ月から3ヶ月程度の期間でアジャイルに開発される
システムエンジニアではなく、業務担当者が自らの業務課題を解決するために開発する
変革アプリケーションは、データドリブン経営の過程で開発れます。
業務担当者が自分の業務の課題を解決する解決策の一つとして変革アプリケーションを開発します。
なお、変革アプリケーションのベースとなるSoRやSoIは、システムエンジニアが開発します。
SoRは、変革アプリケーションに活用されやすいようにマイクロサービスアーキテクチャで実現します。
生成AIを駆使したノーコードAIツールによって開発される
変革アプリケーションは、システムエンジニアではなく、業務担当者によって開発されます。
業務担当者は、システムエンジニアと異なり、通常、プログラム言語によって複雑な処理をコーディングすることができません。
なので、業務担当者は、生成AIを駆使したノーコードAIツールを利用して変革アプリケーションを開発します。
1ヶ月から3ヶ月程度の期間でアジャイルに開発される
生成AIを駆使したノーコードAIツールは、モバイルデバイスが内蔵するカメラやPDFなどの入出力にも簡単に対応できるとともに、マイクロサービスのAPIやSNSのAPIとも簡単に連携することができます。
業務担当者は、ノーコードAIツールを使うことで、変革アプリケーションを1ヶ月から3ヶ月程度の期間でアジャイルに開発することができます。