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ビジネスモデルの作り方【俺のフレンチを題材に解説】

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ここでは、ビジネスモデルの作り方について以下の観点で説明します。

  • ビジネスモデルとは何か
  • 良いビジネスモデルの条件
  • ビジネスモデルを作る手順

ビジネスモデルとは何か

ビジネスモデルとは何か、文字通りに言えば、ビジネスのモデルです。
モデルとは、現実のシステムの特別な一面を簡略化した形で表したものです。
また、システムとは、相互に影響を及ぼし合う要素から構成される、まとまりや仕組みの全体のことなので、ビジネスもシステムの一種です。
これらより、ビジネスモデルを 定義的に言えば、現実のビジネスの特別な一面を簡略化した形で表したもの、ということになります。
ここで、ビジネスの特別な一面、とありますが、ここでは、特別な一面を、静的視点と動的視点で見た姿と考えます。

静的視点とは、様々な状況を一貫して見る視点のことです。
動的視点とは、動いている状況を、視点を移動させながら見る視点のことです。

静的視点によってビジネスの構造を表すことができます。
動的視点によってビジネスの動きを表すことができます。

それでは、ビジネスの構造と動きについて見ていきましょう。
まず、ビジネスの構造ですが、これは、ビジネスを構成する要素同士の相互関係を表します。
次に、ビジネスの動きですが、これは、さらに二つの視点に分けて考えます。
それは、ビジネスを構成する活動の順序関係と、ビジネスを構成する要素や活動の状態の因果関係です。

つまり、ビジネスモデルは、ビジネスの相互関係、順序関係、因果関係を表したものということになります。

良いビジネスモデルの条件

次に、良いビジネスモデルの条件とは何か、考えてみましょう。
まず、ビジネスというからには儲けを出さないといけません。
つまり、ビジネスモデルは儲けを出す内容になっているかどうかが重要です。
これを経済合理性と呼びます。
次に、儲けを出すためには競合に勝つ必要があります。
つまり、競争に勝てる内容になっているかどうかが重要です。
これを、競争優位性と呼びます。
それから、ビジネスは一過性のものではなく継続していく必要があります。
つまり、続く内容になっているかどうかが重要です。
これを、持続可能性と呼びます。

ここでは、最低限、ビジネスモデルが満たすべき条件には、経済合理性、競争優位性、持続可能性の三つがあると考えます。

つまり、ビジネスモデルの良し悪しを判断する場合、そのビジネスモデルは、儲かるか、勝てるか、続くか、という基準で見ればよいということです。

ビジネスモデルを作る手順

最後に、ビジネスモデルを作る手順について、俺のフレンチを題材にして解説します。

最初に、ビジネスモデルを作る一般的な流れについて説明します。
0.ビジネスの動機付け
1.新しい市場空間の創出
2.バリューチェーンの設計
3.コアコンピタンスの設定
4.事業戦略の策定

0.ビジネスの動機付け

最初に、なぜ、そのビジネスをするのか、ビジネスの目的をはっきりさせましょう。
それは、ビジネスを始めようとするキッカケであり、諦めずに、それを続けるための動機付けになるものです。
ビジネスの動機付けが、ビジネスモデルに魂を吹きこみ、それを実現させるのです。
俺のフレンチの場合、市場価格があるため、そこそこの食材で、そこそこのフレンチ料理しかつくれず、モチベーションが落ちている一流シェフに、思う存分、好きな食材をつかって、好きなようにフレンチ料理、つまり、
「俺のフレンチ」をつくらせてあげたい!
という想いが、ビジネスをつくるキッカケだったそうです。

1.新しい市場空間の創出

次に、顧客を定義し、その顧客が抱える課題と、それを解決する価値提案を考えます。
この価値提案は、良いビジネスモデルの条件の一つ「経済合理性」を満たす必要があります。
その際、ブルーオーシャン戦略で、今までにない新しい市場を創ります。

新しい市場空間を創出することで、競合優位性を持たせることができます。

2.バリューチェーンの設計

次に、顧客に価値をどのように届けるのか、バリューチェーン(価値を生み出す連鎖)を考えます。
バリューチェーンを考えるときは、まず、
何をどこから調達し、
それをどう加工し、
顧客にどう届けるか
という骨格となるオペレーションの流れを考えます。
その上で、ブランドを構築するための活動や、良好な顧客関係を構築するための活動など、価値の連鎖をさらに肉付けする活動を考えます。
このバリューチェーンですが、これはビジネスモデルの一つであるビジネスの順序関係を表します。

3.コアコンピタンスの設定

次に、バリューチェーンを構成する活動を実現する上で必要な、他社には真似のできないビジネスの中核的な能力である、コアコンピタンスを考えます。
コアコンピタンスは、資産が持つ利益獲得能力として考えます。
資産には、店舗や設備などの財務資産、特別なスキルを持つ人的資産、知的財産やノウハウを持つ商品である知的資産、稼ぐ力を持つデータである情報資産があります。
資産を考えるときは、資産の能力を活かす手段としてのテクノロジーも合わせて考えます。
コアコンピタンスが設定できたら、各資産同士をつなげて、バリューチェーンを実現するビジネスの相互関係としてモデル化します。
なお、コアコンピタンスは、他社には真似のできないビジネスの中核的な能力なので、競争優位性を生み出す元になります。

4.事業戦略の策定

最後に、収益の視点、顧客の視点、活動の視点、資産の視点で、ビジネスを構成する活動や資産の状態同士の因果関係を考えることで、
そのビジネスは
なぜ儲かるのか(経済合理性)
なぜ勝てるのか(競争優位性)
なぜ続くのか(持続可能性)
を、事業戦略として可視化します。
特に持続可能性は、ビジネスから上がる収益を、資産をさらに確保、強化するための投資に結びつけることで考えます。
それでは、一つ一つ、さらに具体的に見ていきましょう。

新しい市場空間の創出

最初に、良いビジネスモデルの条件の一つ、経済合理性から考えます。
つまり、そのビジネスは、誰に、何の価値を提供することによって、対価を得るのか、を考えるということです。
この場合、「誰」はビジネスの顧客、「価値」は商品を表します。
ビジネスの顧客を考える場合、以下の要点で考えます。

  • 顧客は誰か
  • 顧客の価値観は何か
  • 顧客が抱える課題は何か
  • 顧客の課題を解決する価値提案をどう考えるか
  • 顧客の課題が解決されたときの顧客や商品の状態をどう測るか

顧客は誰か

顧客は誰かを考えるとき以下の手順で考えます。

  • 市場をセグメンテーションする
  • ターゲットとなる市場セグメントを選定する
  • ペルソナを定義する
市場をセグメンテーションする

市場のセグメンテーションとは、市場を様々な切り口で分割することです。
市場を分割するときの切り口としては、フィリップ・コトラーの「市場のセグメンテーション基準」が有名です。
市場のセグメンテーション基準

  • 地理的変数
  • 地域、都市規模、人口密度、気候など

  • 人口統計的変数
  • 年齢、性別、家族数、所得、職業、学歴、国籍など

  • 心理的変数
  • ライフスタイル、性格など

  • 行動的変数
  • 追究利益(ベネフィット)、使用頻度、ロイヤルティ、製品への態度など

ターゲットとなる市場セグメントを選定する

次に、分割された市場セグメントの中からターゲットを選定します。
例えば、
年齢:20代〜30代
性別:女性
職業:主婦
趣味:料理好き
などです。

ペルソナを定義する

最後に、該当する市場セグメントの顧客像を具体的に描きます。
これをペルソナといいます。
ペルソナを定義することで、シンパシー(共感)が湧き、顧客の価値観や課題を、より具体的に考えることができます。
例えば、
佐藤はるか 。
29歳 。
女性。
専業主婦。
都内に住む 。
夫、長男(6歳)、次女(4歳)の4人家族。
料理、カフェめぐり、ランチが趣味 。
Instagramで料理系のアカウントを日頃チェックしている。
自身もレシピブログを開設している。
友人とのやり取りではLINE、Facebookを使用することが多い。
などです。

顧客の価値観は何か

次に顧客の持つ価値観、顧客価値を考えます。
顧客価値は、ビジネスが属している業界の競争要因にもなります。
例えば、ヘアサロン業界の場合、価格、予約担当者の有無、ヘアカットやヘアトリートメントの品質、各種サービスの多さ、サービスまでの待ち時間の短さ、ヘアカット時間の短さ、衛生さなどが考えられます。
顧客価値を考えるときは、QCD(Quality、Cost、Delivery)、つまり、品質(うまい)、価格(安い)、納期(早い)や、新しい機能、ブランド価値、パートナーシップなどの基準を用いると容易に考えることができます。

顧客が抱える課題は何か

次に、定義した顧客が抱えている課題は何か、考えます。
例えば、先のヘアサロンビジネスの場合、品質はそこそこでよいので、早くて安いサービスを求める顧客をターゲットにした場合、早くて安いサービスが、顧客が抱える課題になります。

顧客の課題を解決する価値提案(バリュープロポジション)をどう考えるか

次に、先に定義した課題を解決するために、どのような価値を提案するか、考えます。
その際、ブルーオーシャン戦略の方法によって、新しい価値の体系である市場空間を創ります。
ブルーオーシャン戦略では以下の方法によって新しい市場空間を考えます。

  • 代替産業に学ぶ
  • 他の戦略グループから学ぶ
  • 買い手グループに目を向ける
  • 補完材や補完サービスを見渡す
  • 機能志向と感性志向を切り替える
  • 将来を見通す

例えば、先のヘアサロンビジネスの場合、各種サービスをなくすことでサービスメニューを絞り、経験がない美容師でもできるようにし、エアーウォッシャーという特殊な機械を導入することで、サービスにかかる時間をより短くし、かつ、安くサービスを提供でき、しかも、採算が得られる市場空間を創出することができます。
この、横軸に競争要因(顧客価値)、縦軸に競争要因(顧客価値)の強弱(大小)を取り、市場空間を見える化した図を「戦略キャンバス」といいます。
戦略キャンバスを構成する競争要因(顧客価値)について

  • 新しい競争要因を加える
  • 既存の競争要因を除く
  • 既存の競争要因を増やす
  • 既存の競争要因を減らす

という4つのアクションを考えることによって新しい市場空間を創出するのです。
ところで、このヘアサロンは実在します。
そうです、QBハウス。ご存知ですよね。

顧客の課題が解決されたときの顧客や商品の状態をどう測るか

最後に、顧客の課題が解決されたときの顧客や商品の状態を測る重要業績評価指標、KPI(Key Performance Indicator)を考えます。
先のヘアサロンビジネスの場合、店舗回転率や顧客来店数などが考えられます。

俺のフレンチの例

ここで、俺のフレンチの市場空間について考えてみましょう。
まず、俺のフレンチのターゲット顧客を、
都市に勤務する、あまりお金に余裕のない中堅サラリーマン
と設定します。
つまり、一握りのリッチ層ではなく、大勢の人が属するマスを狙うわけです。

次に、顧客の価値観ですが、フレンチ料理を食べる場合、まず、フレンチ料理の美味しさがあります。
それ以外には、店舗サービスの良さや価格の安さが考えられます。

次に、ターゲット顧客の課題について考えてみましょう。
フレンチ料理を食べたいという顧客がターゲットなので、料理の味の良さはかかせない要因でしょう。
また、ターゲットは、あまりお金に余裕のない中堅サラリーマンであることを考慮すると価格の安さも重要なファクターになります。
そうすると、高級フレンチ料理を安くたべたいという顧客のニーズを満たすことが課題になります。
それでは、高級フレンチを低価格で提供するにはどうすれば良いか、考えてみましょう。
高級フレンチも店舗商売なので低価格で採算を得るためには店舗回転率を上げるしかありません。
つまり、薄利×多売にするのです。

ここで、飲食業界の顧客グループに目を向けてみましょう。
品質×価格のマトリクスで顧客グループを分けた場合、
品質も価格も高いセグメントは高級フレンチを好むグループ
品質も価格も高いセグメントは立ち飲み屋を好むグループ
という構図が考えられます。


通常、それぞれの顧客グループごとに血みどろの競争が繰り広げられています。
ここでは、このようなレッドオーシャンを避けて、まだ、だれもいないブルーオーシャンを目指して新しい市場空間を考えてみましょう。
そこで、ブルーオーシャン戦略の「他の戦略グループから学ぶ」方法を適用して考えます。
すると、高級フレンチに、他の顧客グループである立ち食いスタイルを取り入れる、高級フレンチ×立ち食い(薄利×多売)というアイデアが生まれてきます。
そこで、縦軸に、顧客価値である料理の品質、店舗サービス、価格をとり、縦軸に顧客価値の大小をとって市場空間を戦略キャンバスで表してみましょう。

俺のフレンチの場合、店舗サービスを落とすことで、フレンチ料理を安く品質を担保したまま提供するという市場空間を実現できたのです。

バリューチェーンの設計

続いて、顧客に価値をどのように届けるか、バリューチェーン(価値の連鎖)を考えましょう。
俺のフレンチの場合、一流シェフと立ち食いスタイルの店舗を調達し、安くて美味しいフレンチ料理を提供するという流れが骨格の部分になります。

これを順序関係で表すと次のようになります。

コアコンピタンスの設定

それでは、バリューチェーンを構成する活動を実現する上で必要な、他社には真似のできないビジネスの中核的な能力である、コアコンピタンス、あるいは、その能力を生み出す資産は何になるでしょうか。
俺のフレンチの場合、美味しいフレンチ料理がつくれる一流シェフと、立ち食いスタイルのお店、これがビジネスのコアとなる資産ですね。
それでは、資産同士をつなげて相互関係で表してみましょう。

これは、バリューチェーンの中の「フレンチ料理を提供する」活動を資産同士の相互関係で表したモデルです。

事業戦略の策定

最後に、俺のフレンチは、
なぜ儲かるのか(経済合理性)
なぜ勝てるのか(競争優位性)
なぜ続くのか(持続可能性)
その因果関係をモデル化してみましょう。

まず、一流シェフのつくった美味しい高級フレンチ料理を、立ち食いスタイルのお店で提供することで、立ち食いでもいいから美味しいフレンチを安く食べたいという顧客のニーズが満たされて、収益が上がります。
これによって、ビジネスモデルの経済合理性という条件が満たされます。
次に、上がった収益を、限りのある資源である一流シェフを確保するために使います。
また、都市部の限りある空間にできるだけ多く出店して、その地域の顧客を総取りします。
これらによって、新規参入障壁を高くすることで、ビジネスモデルの競争優位性を上げます。
最後に、一流シェフと店舗に投資を継続して、ますます新規参入障壁を高くすることで持続可能性を向上させます。
以上、良いビジネスモデルの条件を満たすモデルを創ることができました。
しかし、実際は、事業戦略を実験計画に展開し、実験し、その結果を検証し、学習と改善を繰り返しながらビジネスの仕組みを構築していきます。

今回は、ビジネスモデルの作り方について、俺のフレンチを題材にして解説しました。

-DX, ビジネス
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執筆者:


  1. […] それから、企業の組織および役割と、戦略的に重要な領域のビジネスプロセスを設計します。 ビジネスプロセスには、購買や販売などの定型的なプロセスと、ビジネス課題を解決するための非定型的な仮説検証プロセスがあります。 仮説検証プロセスの一つとして、データを有効活用する データサイエンス があります。 次に、ビジネスプラットフォームの上で実行する各事業をビジネスモデルとして設計します。 ビジネスモデルは以下の観点で設計します。 […]

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