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【実践!DX】基幹システムの構築

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DX戦略の考え方という記事で、企業情報基盤について説明しました。
企業情報基盤の構成要素の一つにアプリケーション基盤がありますが、それを構成する一つがERP(Enterprise Resource Planning)です。
ERPは、企業全体を経営資源の有効活用の観点から統合的に管理し、経営の効率化を図るための手法・概念のことで、それを実現したシステムが、いわゆる企業の基幹システムです。
今回は、基幹システムを構成する重要なソリューションであるサプライチェーン管理(SCM)製品ライフサイクル管理(PLM)顧客関係管理(CRM)について説明します。
なお、ここでいうソリューションとは、特定の業務プロセスの課題を解決するために設計された包括的なソフトウェアまたはサービスのことです。
サプライチェーン管理(SCM)、製品ライフサイクル管理(PLM)、顧客関係管理(CRM)の主な活動領域は、次のようになります。

サプライチェーン管理(SCM)

サプライチェーン管理(SCM:Supply Chain Management、以下、SCM)とは、製品やサービスを提供するために必要な資材や部品などを供給するネットワーク全体を統合的に管理するソリューションです。
そのため、SCMでは、サプライチェーンに関する情報をサプライチェーンデータベースとして一元的に管理します。
次の図は、SCMが適用された業務と、それによるメリットを示した図です。

SCMに関連する主な活動は、購買、生産、販売、物流です。
販売活動から得られるデータによる需要予測データに基づいて予算策定、製版調整、生産計画を行うことで、過剰な部品の調達や製品の製造、あるいは、過小な部品の調達や製品の製造を防ぐことができ、その結果、在庫を最適化することができます。
在庫を最適化することで、物流コスト(運送コストや保管コスト)を削減することができます。
また、需要予測データをフォーキャストとして仕入先に共有することで、仕入先は、事前に部品の準備を進めることができるので、結果的に調達リードタイムを短縮することができます。
さらに、適正在庫を実現することで、部品不足、それによる製造の停滞を防ぐので、結果的に製造リードタイムを短縮することができます。
調達リードタイムや製造リードタイムの短縮は顧客に対する納期の遵守につながります。
最後に、生産体制を見直し、複数の流通経路を確保することで事業継続性リスクを低減することができます。
納期の遵守と事業継続性リスクの低減は、顧客に対する製品の安定供給につながります。
SCMを実施することによる効用を図で表すと次のようになります。

製品ライフサイクル管理(PLM)

製品ライフサイクル管理(PLM:Product Lifecycle Management、以下、PLM)とは、製品開発力や企業競争力を強化するために、製品ライフサイクル全体(製品企画・設計、調達、製造、販売、物流、保守サービス)に渡って発生する様々な技術情報を集約してエンジニアリングチェーンを繋いで管理するソリューションです。
そのため、PLMでは、製品ライフサイクルに関する情報を一元的に管理します。
次の図は、PLMが適用された業務と、それによるメリットを示した図です。

PLMに関連する主な活動は、マーケティング戦略、製品企画・設計から生産中止まで製品のライフサイクルに関わる活動です。
PLMを導入することで、製品設計によって生成される設計BOMをベースに、製造BOMを自動生成することができます。
その際、設計図(3Dモデル)のステータスを管理することで、製品設計と生産準備の過程をコンカレントに進めることができ、開発リードタイムを短縮することができます。
具体的に言うと、まず、3DモデルをPLMに登録すると設計チーム内で共有できます(ステータスは仕掛)。
3Dモデルを公開すると生産準備を担当する部門が参照できます(ステータスは公開)。
この状態で、設計と生産準備のコンカレントエンジニアリングを行います。
そして、承認すると全社から参照可能となります(ステータスは正式)。
PLMで意思を入れてステータスを更新することで、設計と生産準備業務の整流化を図ることができます。
3Dモデルのステータスが正式になると、製造BOMが購買品の購買BOM、販売品の販売BOM、サービス部品のサービスBOMに自動的展開されます。
次に、並行して、調達企画を通して購買BOMを調整し、販売企画を通して販売BOMを調整し、サービス企画を通してサービスBOMを調整します。
このように、設計BOMから製造BOMを、調達BOM、販売BOM、サービスBOMが自動的に展開(BOMの自動展開)され、並行して作業を進めるることで、製品を企画してから、それを市場にリリースするまでの開発リードタイムが短縮され、企業の競争力を高めることができます。

BOM

BOM(Bills of materials)とは、製造業で用いられる部品表の一形態です。BOMは通常「PN(Parts Number)」という品目情報と、「PS(Part Structure)」というPNの親子関係を管理する構成管理情報で構成されます。製品の見積もり時点から、設計、調達、製造、メンテナンスにまで利用され、多岐にわたる近年のものづくりにおいて、BOMは極めて重要です。
一般的にBOMには次のような種類があります。

  • 設計BOM(E-BOM)
    設計部門が設計を行う場合に用いるBOM。最終製品が出来上がる為に必要となる部品の構成と数量が全て網羅されている。形としてはフラット型と階層型がある。設計者は顧客の求める機能を製品に反映させる為、E-BOMにおける階層型は機能としての分類がなされているのが通常です。従ってE-BOMには製造する為の情報は含まれないことになります。定格値や誤差、機能の詳細などの技術情報や仕様、代替可能部品などの情報が判るようにサポートされていることがあります。M-BOMの前段階で作製されます。
  • 製造BOM(M-BOM)
    製造部門が製造、組み立てを行う場合に用いるBOM。生産に必要になる部品総数などを正確に把握する為に、組み立てに使用されるユニットや基板単位に構成されます。製造は設計で造られたE-BOMを基に行われるが、E-BOMには製造方法が入っていない為、一般的には生産技術などと言った部門でどの工程を流して製造させるか決めた上で製造ラインにのせる事になります。この際E-BOMの機能中心で出来た階層構造と実際に生産する親子構成が全く違ってくるのが一般的です。組み立ての際に作業しやすいように組み立て順に番号が振られていることがあります。
  • 購買BOM
    購買部門が発注を行う場合に用いるBOM。発注作業に不要な部分(組立配線や基板実装に必要なロケーション番号)は使用されず、見積・発注作業に必要な、購入単位数量や、仕入先ごとの購入価格リスト、代替品種のリストなどをサポートしていることがあります。
  • サービスBOM
    製品サービス、保守メンテナンスを行う際に用いるBOM。メンテナンスに便利な様に、よく消耗する部品(Oリングやグリース、電力ヒューズ、感熱紙のロールペーパーなど)を特に取り上げています。
  • 販売BOM
    販売活動やマーケティングに使用される、従来のBOMのバリエーションです。標準的なBOMが製造に必要な部品や部材に焦点を当てるのに対し、販売BOMは顧客に販売されるアイテムや製品の詳細なリストを提供します。
    販売BOMの目的は、販売チームや顧客が特定の製品やサービスを購入した場合に受け取る内容を明確にすることです。販売BOMには、メインの製品だけでなく、付属品、アドオン、またはオプションのコンポーネントなど、バンドルされる可能性のあるアイテムも含まれる場合があります。

PLMでは、製品設計、生産準備の段階で品質基準が定められ、部品の調達、製造、販売、サービスそれぞれの過程で、調達部品、製造品、出荷品、納入品の品質を検査し、その情報を共有する(プロセス品質の確保)ことで、製品品質を向上させます。
また、SCMと組み合わせ、サプライチェーン全体を通して、部品、製品のシリアル番号、ロット番号を識別し共有することで、製品のトレーサビリティ(追跡可能性)を確保することができ、次のようなプロセスで適切な処置をすることができます。

  1. 品質問題の検知
    品質問題が発生した場合、顧客からのクレーム、内部の品質検査や異常報告、不良品の出荷などの情報をもとに、品質問題が発生したことを検知します。
  2. トレーサビリティ情報の参照
    品質問題が報告された製品に対して、トレーサビリティ情報を参照します。製品のロット番号やシリアル番号、製造日時、生産ライン、使用された部品や原材料などの情報を確認します。
  3. 関連情報の収集
    品質問題の特定や原因解明に必要な情報を収集します。これには、製品の製造データ、品質検査結果、製造プロセスの記録、部品の仕様書、品質管理手順などが含まれます。
  4. 問題の原因特定
    収集した情報を分析し、品質問題の原因を特定します。製品の製造プロセスや部品の不良、品質管理手順の不備など、さまざまな要素が原因となる可能性があります。
  5. 対応策の立案
    品質問題の原因を特定した後、適切な対応策を立案します。
    例えば、故障した部品と同じロット番号の部品が含まれる製品、納入品をすべて再検査することで故障が発生する前に対応することができます。
    また、対応策には、製品のリコール、製品の求償対応、不良部品の交換、製造プロセスの改善、品質管理手順の見直しなども含まれます。
  6. 問題の解決と予防
    立案した対応策を実施し、品質問題を解決します。
    また、同様の問題が再発しないように、予防策を講じることも重要です。製品設計や製造プロセスの改善、品質管理の強化など、予防策の実施により、将来の品質問題を予防することができます。

さらに、顧客データベースのクレーム情報を製品企画、設計変更に活かすことで、製品の市場適合性を上げることができます。

プロセス品質

品質には、製品やサービスの品質であるプロダクト品質のほか、製品やサービスを生み出すための過程にも品質があり、これをプロセス品質といいます。
品質を考える場合、プロダクト品質だけでなく、プロセス品質を考えることも重要です。
高品質な製品が一つ出来たとしても、それが偶然の産物であっては意味がありません。
安定して高品質な製品やサービスを生み出し続けるためには、生産の過程そのものが高品質である必要があります。
生産工程の細分化と分業が進む昨今、生産開始段階から各工程でしっかり品質を作り込んでいくという姿勢が大変重要です。

PLMを実施することによる効用を図で表すと次のようになります。

顧客関係管理(CRM)

顧客関係管理(CRM:Customer Relationship Management、CRM)とは、顧客との関係を強化し、顧客とのコミュニケーションや相互作用を最適化するための戦略的なアプローチや技術の総称です。
そのため、CRMでは、顧客に関する情報を顧客データ・ベースとして一元的に管理します。
次の図は、CRMが適用された業務と、それによるメリットを示した図です。

CRMに関連する主な活動は、マーケティング戦略、セールスフォース、プロモーション、販売チャネルの管理、サービスです。
CRMでは、それぞれの過程で発生する顧客データを顧客データベースで一元管理します。
CRMによって集約された顧客データを収集し分析することで、市場傾向や顧客行動を把握し、マーケティング戦略の意思決定に活用することができます。
顧客データを一元管理し、顧客の好みやニーズを把握することで、パーソナライズされたサービスやエクスペリエンスを提供することができます。
顧客データを顧客データベースで一元管理することで、顧客情報や購買履歴を基にしたターゲットマーケティングやクロスセル、アップセルの提案など、顧客に最適なオファーやキャンペーンを展開することができます。
これにより、顧客の購買意欲が向上し、収益が増加します。
顧客情報や履歴の共有により、顧客サービス担当者は顧客の問題や要求を個別に対応することができ顧客サービスの質を上げることができます。
また、顧客データを収集し分析することで、マーケティング活動の効果を把握できるので、それを施策にフィードバック(マーケティング効果のフィードバック)することで、マーケティング効果を最大化することができます。
以上より、顧客の満足度が向上し、長期的な顧客ロイヤリティが築かれ、顧客生涯価値を上げることができます。
CRMを実施することによる効用を図で表すと次のようになります。

以上、今回は、基幹システムを構成する重要なソリューション、SCM、PLM、CRMについて解説しました。

-DX, アプリケーション, ビジネス

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  1. […] 次に、情報資本ポートフォリオ(情報システム基盤とアプリケーションの構成)とはどのようなものか見ていきましょう。 書籍「戦略マップ」では、アプリケーションと、それを支えるITインフラを分類した情報資本ポートフォリオに基づいて投資の資源配分を行うことを推奨しています。 さて、記事「DX戦略の考え方」では、DXの戦略マップについて説明しました。 また、戦略マップの土台となるのが企業情報基盤であり、DXのベースとなる企業の中枢神経になることも説明しました。 そこで、ここでは、企業情報基盤の物理基盤を構成する各種基盤とアプリケーションの構成から成る情報資本ポートフォリオを次のように定義します。 このアプリケーションのうち、トランザクション処理アプリケーションを、企業情報基盤・アプリケーション基盤のERP、分析アプリケーションと変革アプリケーションを戦略的アプリケーションと位置づけます。 また、業務管理のアプリケーションをSCMと位置づけます。 さらに、そのうち販売分析アプリケーション、販売変革アプリケーションをSFAと位置づけます。 顧客管理のアプリケーションをCRMと位置づけます。 また、製品管理のアプリケーションをPLMと位置づけます。 […]

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