という記事では、DX戦略マップについて説明しました。
今回は、DX戦略マップの中でも重要なデータドリブン経営について次の観点で説明します。
- データドリブン経営とは何か
- データドリブン経営の位置づけ
- データドリブン経営のロードマップ
- データドリブン経営の内容
- ビジネスプロセスマネジメント
- アプリケーションマネジメント
- データマネジメント
- ITマネジメント
データドリブン経営とは何か
一般的には、経営判断やビジネス戦略の決定に、データや分析結果を活用することを指しますが、ここでは、企業をDXの一環と捉えて、
社員一人ひとりがデータを利活用して自律的に業務課題を解決することができる状態に変革すること
を目指します。
データドリブン経営を実現するためには、IT基盤とコミュニケーション基盤を運営して実現するITマネジメント、アプリケーション基盤を運用して実現するアプリケーションマネジメント、データ基盤を運用して実現するデータマネジメント、BPM基盤を運用して実現するビジネスプロセスマネジメントが必要です。
ビジネスプロセスマネジメントは、継続的に業務改善をするための体系的な手法です。
アプリケーションマネジメントは、DevOpsやマイクロサービスアーキテクチャによって、アプリケーション開発の生産性や保守性を改善します。
なので、業務改善の一環としてアプリケーションの開発や改良が必要な場合、それを速やかに実現します。
なお、COBITやITILは、アプリケーションマネジメントとITマネジメントを合わせたスコープになります。
データドリブン経営は、企業に蓄積されたデータを活用しますが、そのデータの品質が悪いと間違った意思決定をする可能性があります。
企業のデータの品質やセキュリティを継続的に管理する方法がデータマネジメントです。
さて、データドリブン経営を加味した戦略マップの雛形は次のようになります。
さらに、
- リスクの制御
企業の資産や活動に潜在するリスクを明確にし、それをコントロールすることで生産性を維持、向上させる - 資産・活動の最適化
必要な資産や活動を、戦略的に重要な領域に集中させ、企業全体のムリ、ムダ、ムラを無くし、最も経営上の効果が上がる状態にする。
データドリブン経営の位置づけ
次にDX戦略におけるデータドリブン経営の位置づけについて見ていきましょう。
まず、データやデジタル技術を活用した事業や業務の変革についてまとめると次のようになります。
- データやデジタル技術を活用した事業の創出・変革
- データやデジタル技術を活用した業務の改革
- データやデジタル技術を活用した業務の改善
まず、事業の創出・変革ですが、これはイノベーションになります。
事業の創出・変革は、新規事業をスタートアップして実現します。
シュンペーターは、イノベーションを次の5つに分類しています。
- 新しい製品/サービスの創出
新しい財貨、新しい品質の財貨の生産。 - 新しい生産方式の導入
当該産業部門において実際上 未知な生産方式の導入。 - 新しい市場の開拓
当該国の当該産業部門が従来参加していなかった市場の開拓。 - 新しい資源の獲得
原料あるいは半製品の新しい供給源の獲得。 - 新しい組織の実現
新しい組織の実現による独占的地位の形成、あるいは独占の打破。
この5つのパターンを、記事【実践!DX】顧客の創造とイノベーション【創造と変革】で示したイノベーションマトリクスに基づいて考えると次のようになります。
- 新しい製品/サービスの創出
潜在的シーズと潜在的ニーズの新結合による新しい製品やサービスの創出。 - 新しい生産方式の導入
新しい技術やプロセス(潜在的シーズ)に基づいた新しい生産方式の導入。 - 新しい市場の開拓
潜在的ニーズの開拓。 - 新しい資源の獲得
新しい原料あるいは半製品(潜在的シーズ)の獲得。 - 新しい組織の実現
新しいジョブや組織形態(潜在的シーズ)の実現。
これらのうち、潜在的シーズとしての新しい技術をともなうイノベーションであれば、すべてDXによる事業の創出・変革になると考えることができます。
この事業の創出・変革(イノベーション)は、データドリブン経営ではなく、DX戦略マップでいうと戦略的アプリケーションを活用したケースになります。
次に、事業の創出・変革のように新規事業をスタートアップするのではなく、既存事業の業務を改革、改善するケースについて見ていきましょう。
ここでは、例えば、これまで人が行っていた活動をAIに置き換えたり、業務の流れそのものを変えるなど大幅なビジネスプロセスの変更を伴うものを業務改革と位置づけ、ある活動のビジネスルールの変更など、従来のビジネスプロセスの大幅な変更を伴わないものを業務改善と位置づけます。
この既存事業の業務を改革、改善するケースがデータドリブン経営で、そのプロセスのイメージは次のようになります。
本プロセスは、下段の実践プロセス(深化)と、上段の実験プロセス(探索)から成る両利きの経営プロセスです。
実践プロセスは、定期的な経営計画を実践する日常的なPDCAサイクルです。
社員が、実践プロセスを遂行する中で気づいた(Inspiration)業務改善や新規事業などに関するアイデアを実現するプロセスが実験プロセスです。
実験プロセスは、デザイン思考でいうと、洞察からアイデアを創出、構築、検証する発案(Ideation)プロセスにです。
データドリブン経営のロードマップ
次の図は、DMBOKのデータマネジメント成熟度モデルを、各分野別に詳細化したものです。
データマネジメント成熟度モデルに合わせて、次の図のように、データ利活用の成熟度も上がり、DXが進みます。
これでいうと、レベル4以降がデータドリブン経営を実現した状態になります。
レベル5は、データやデジタル技術を活用した事業の創出・変革を実現した状態です。
次に、データドリブン経営を最適化している状態にするまでのステップを、スタートアップの事業成長ステージで考えると次のようになります。
まず、アーリーステージで、レベル3、定義された状態を目指し、
ミドルステージで、レベル4,定量的に管理された状態を目指します。
そして、レーターステージで、レベル5の最適化している状態にします。
データドリブン経営の内容
ここでは、データマネジメントが導入された後、マネジメントサイクルの戦略期間の運用フェーズで、データドリブン経営がどう運営されるか説明します。
運用フェーズでは、会計期間でマネジメントサイクル(PCDA)が実行されます。
なので、ここでは、データドリブンでどのようにPDCA(Plan-Do-Check-Act)の各アクションが実施されるか説明します。
- 計画(Plan)
BSCのKPI目標を実現するためのアクションプラン(実践プラン)を策定します。 - 実行(Do)
アクションプラン(実践プラン)を遂行します。 - 検証(Check)
検証は次の順で行います。問題の特定(Where)
まず、KPI目標値と実績のGapである問題を発見します。
次に、ドリルダウン・アップやスライシングによる多次元分析によって、どこに問題があるか特定します。
データ分析は、記述的分析、予測的分析、処方的分析に分けることができますが、多次元分析は、記述的分析(Descriptive Analytics)になります。
原因の推定(Why)
多次元分析によって、どこに(Where)問題があるか特定できたら、次に、なぜ(Why)問題が生じたのか、仮説推論(Abduction)で問題の原因を推定します。
そして、回帰分析など機械学習を通して原因の確からしさを検証します。
回帰分析は主に帰納(Induction)的な手法であり、与えられたデータから一般的な法則になる変数間の関係性を導きます。
なお、回帰分析は、予測的分析(Predictive Analytics)になります。 - 改善(Act)
改善は次の順で行います。課題の設定
まず、原因を取り除くことを課題(Issue)として設定します。
解決策の考案
次に、仮説推論(Abduction)で、課題に対する解決策(仮説)を考えます。
AIを活用した解決策(レコメンド、最適な治療法の提案、最適な学習経路の提案など)も含みます。
AIを活用した解決策は、処方的分析(Prescriptive Analytics)になります。
実験計画の策定
次に考案された課題解策を、ランダム化比較実験など因果推論の具体的な実験プランに落とし込みます。
解決策の検証
ランダム化比較実験を行い課題と解決策に、因果関係(一般的法則)があるか検証します。
すべての解決策(仮説)に統計的な有意性がない場合、課題(課題)を見直します。
業務の改革・改善
因果関係が実証された解決策をビジネスプロセスに組み込みます(実験から実践へ)。
ここでは、例えば、これまで人が行っていた活動をAIに置き換えたり、業務の流れそのものを変えるなど大幅なビジネスプロセスの変更を伴うものを業務改革と位置づけ、ある活動のビジネスルールの変更など、従来のビジネスプロセスの大幅な変更を伴わないものを業務改善と位置づけます。
そして、解決策が組み込まれたビジネスプロセスをベースにPlan(アクションプラン)を策定します。
実証された解決策を適用してアクションを実行し結論を導くのは演繹(Deduction)的アプローチです。
以上のように、データドリブン経営は、仮説検証を繰り返す科学的アプローチです。
PDCAの結果をすべて記録しノウハウとして蓄積することで学習し進化する組織が実現します。
ビジネスプロセスマネジメント
は、継続的に業務改革、改善をするための体系的な手法です。
スタートアップでは、アーリーステージでERPを導入し、BPM基盤を構築するとともに、ビジネスプロセスマネジメントを定義された状態(レベル3)にします。
アプリケーションマネジメント
アプリケーションマネジメントの内容については、記事「アプリケーションマネジメントの導入方法」を参照してください。
スタートアップでは、アーリーステージでERPを導入し、アプリケーション基盤を構築するとともに、アプリケーションマネジメントを定義された状態(レベル3)にします。
データマネジメント
データマネジメントの内容については、記事「【DMBOKで学ぶ】データマネジメントの導入方法」を参照してください。
スタートアップでは、アーリーステージでERPを導入し、データ基盤を構築するとともに、データマネジメントを定義された状態(レベル3)にします。
ITマネジメント
ITマネジメントの内容については、記事「【ITILで学ぶ】ITサービスマネジメント」を参照してください。
スタートアップでは、アーリーステージでERPを導入し、IT基盤を構築するとともに、ITマネジメントを定義された状態(レベル3)にします。