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【実践!DX】事業戦略とDX戦略【ビジネスからシステムへ】

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記事「【実践!DX】事業の成長ステージと戦略【戦略の本質】」

では、戦略課題に対して、次の点を明確にする必要があると説明しました。

  • 戦略課題を解決するための人的資本とスキルセット
  • 戦略課題を解決するための情報資本とシステム機能
  • 戦略目標を実現するための組織資本とマインドセット

今回は、このうち「戦略課題を解決するための情報資本とシステム機能」について次の観点で説明します。

活動と情報システム

活動と情報システムの関係については記事「活動の展開」を参照してください。
活動と情報システムの関係でいうと、アプリケーションタイプと、それを構成するアプリケーションタスク、概念データモデルと、それを構成するデータタイプが情報システムに関連します。

情報資本ポートフォリオとEAの設計

戦略課題を解決するための情報資本を考える場合、まず、EAを設計します。
次の図は、俺のフレンチのミドルステージの情報資本ポートフォリオの例です。

データアーキテクチャ

俺のフレンチの情報資本ポートフォリオを見ると次のことがわかります。

  • マスター共有ハブとDWHを企業全体のデータ基盤として構築する。
    DWHは、店舗分析システムや社員分析システムの分析データを蓄積するコンテナになります。

マスター共有ハブで管理する、俺のフレンチのマスターデータですが、代表的なデータは次のようになります。

  • 商品管理システムが主幹システムとなる品目マスター。
    レシピも管理したいので作業も含めたBOM(部品表)にします。
  • 顧客管理システムが主幹システムとなる顧客マスター。
  • 購買管理システムが主幹システムとなる仕入先マスター。
  • 店舗管理システムが主幹システムとなる店舗マスター。
  • コードマスター。
    柔軟にコードを追加、変更できるようコードマスターを設け、すべてのマスターデータが参照できるようにします。

アプリケーションアーキテクチャ

俺のフレンチの情報資本ポートフォリオを見ると次のことがわかります。

  • 各アプリケーションを連携する基盤としてEAIを活用する。

アプリケーション基盤としてのEAIを活用した、俺のフレンチのアプリケーションアーキテクチャ(AA)は次のようになります。

各アプリケーションが、ビジネスロジックやデータアクセスを担うマイクロサービスとして機能しており、フロントエンドアプリケーションから使われる構造になっています。
また、店舗分析システムや社員分析システムの分析データは、データ基盤のDWHののデータマートになります。

テクノロジーアーキテクチャ

俺のフレンチの情報資本ポートフォリオを見ると次のことがわかります。

  • アプリケーションを支えるIT基盤としてクラウドコンピューティングを活用する。
  • コミュニケーション基盤として電子メールシステム、チャットシステム、Web会議システムを導入する。

情報資本を事業戦略に方向づける

情報紙本ポートフォリオをベースにEAが設計できたら、それを踏まえて、情報資本を事業戦略に方向づけます。
次のステップで進めます。

  1. 人的資本であるジョブをベースにトランザクション処理アプリケーションを定義する
  2. 戦略課題を解決する戦略的アプリケーションを定義する

トランザクション処理アプリケーションの定義

記事「【実践!DX】人的資本の戦略【人材から人財へ】」

では、人的資本を事業戦略に方向づけました。
活動と情報システムの関係を見てもわかるように、ジョブが定義されると、それが活用するアプリケーションも定まります。
なので、情報資本として選択されたジョブをベースに、戦略課題を解決するアプリケーションを情報資本ポートフォリオから選択すると次の図のようになります。

  • 人的資本としてのジョブ、販売管理者を支援するトランザクション処理アプリケーションを販売管理システムとしました。
  • 人的資本としてのジョブ、 顧客管理者を支援するトランザクション処理アプリケーションを顧客管理システムとしました。
  • 人的資本としてのジョブ、店舗管理者を支援するトランザクション処理アプリケーションを店舗管理システムとしました。
  • 人的資本としてのジョブ、社員管理者を支援するトランザクション処理アプリケーションを社員管理システムとしました。
  • 人的資本としてのジョブ、仕入先管理者を支援するトランザクション処理アプリケーションを購買管理システムとしました。

戦略的アプリケーションの定義

次に、戦略課題を解決する戦略的アプリケーションを次のように定義しました。

  • 変革アプリケーションとして予約管理システムを定義する。
    「店舗オペレーションの効率化」という戦略課題を解決するために、オンライン予約により、空き時間を利用して、販売管理者は、あらかじめ来客の準備をすることができるようするためです。
  • 分析アプリケーションとして社員分析システムを定義する。
    「効果的・効率的社員採用プロセスの実現」という戦略課題を解決するために、社員データを使って適切な社員を分析できるようにするためです。
  • 分析アプリケーションとして店舗分析システムを定義する。
    「効果的・効率的店舗開発プロセスの実現」という戦略課題を解決するために、店舗管理者が、エリア情報や店舗情報から出店した場合の収益性を予測することができるようにするためです。
    また、店舗分析システムを使って、生成AIを活用した店舗デザインができるようにします。

あるべきビジネスプロセスの設計

情報資本を事業戦略に方向づけることで、戦略課題を解決する、あるべきビジネスプロセスの業務フローを設計することができます。

アプリケーションの要求定義

さて、戦略マップを使って、情報資本を事業戦略に方向づける場合、戦略課題を解決するための情報資本目標として、戦略課題を解決する機能を備えたアプリケーションを設定し、アプリケーションの機能に対する要求を情報資本課題として定義します。

ここでは、アプリケーションに対する要求をどう考えるのか見ていきましょう。
活動と情報システムの関係を見てもわかるように、業務フローを構成する要素であるジョブのタスクからアプリケーションタイプのアプリケーションタスクが活用されています。
なので、まず、業務フローのシステムのレーンからアプリケーションの機能を洗い出し、アプリケーションの機能(アプリケーションタスク)として定義します。
店舗分析システムを例にして考えてみましょう。

業務フローから上図の4つのアプリケーションタスクを定義することができます。
それでは、店舗分析システムの4つの機能に対する要求は何でしょうか。
アプリケーションが解決すべき課題は、
効果的・効率的店舗開発プロセスの実現
です。
なので、例えば、高い収益予測の精度や、効果的な店舗デザインが求められます。
情報管理者は、これらの要求を「アプリケーション要求定義書」に定義します。

ビジネスからシステムへ

戦略課題を解決するための情報資本とシステム機能が設計できたら、それをベースに、システムの要件定義を進めることができます。

システムの機能要件

戦略課題を解決するアプリケーションの機能と、機能に対する要求が定まれば、それをベースにシステムの機能要件を定義することができます。
店舗分析システムの例で見てみましょう。
上記店舗分析システムの4つの機能から、システムのユースケースモデルを作ることができます。

「店舗の開発」プロセスの業務フローを見ると、

  • 店舗分析システムに関連するアクターは、店舗管理者であること
  • 店舗分析システムに物件データを登録するとき、店舗管理システムにも登録されること

がわかります。
俺のフレンチのアプリケーションアーキテクチャを適用すると、店舗分析システムから、EAIを介して物件データが店舗管理システムに渡されることになります。
アプリケーションアーキテクチャでは、アプリケーション間のデータ連携をどうするか、データの連携形態も設計します。
データ連携の即時性が要求されなければ、通常、APIを介したリクエストレスポンス型の同期通信ではなく、キューやトピックを介したイベントドリブン型の非同期通信によってアプリケーション間の依存度を下げるよう設計します。

システムのデータ要件

ビジネスプロセスの概念データモデルは、システムのデータ要件になります。
「飲食サービスの提供」プロセスの概念データモデルは次のようになります。

なお、支払データは、会計管理システムに渡されて売上データになります。
それから、概念データモデルは、分析設計工程で、ドメイン駆動設計のドメインモデルを設計するベースになります。

【関連動画】

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